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気軽にシェアサイクル、公共交通を補完 台湾の11県市に拡大、行政支援がカギ 沖縄進出計画するも…<サイクルの島へ 台湾の事例から>3


気軽にシェアサイクル、公共交通を補完 台湾の11県市に拡大、行政支援がカギ 沖縄進出計画するも…<サイクルの島へ 台湾の事例から>3 毎朝ユーバイクで通勤する県産業振興公社台北事務所の上江洲辰徳所長=2月、台北市内
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 沖縄県台北事務所の上江洲辰徳所長の1日は、台湾で普及するシェアサイクル「ユーバイク」の利用から始まる。台北市内の自宅近くの駐輪ポートで、交通系IC「悠遊カード」を自転車にかざしてロックを解除。約15分こぎ、職場近くの別の駐輪ポートで返却して出勤する。

 市内にはこうした駐輪ポートが1362カ所ある。サービスを提供する市政府は2月28日から、30分以内の利用なら5元(約24円)としていた料金を無料にした。「設置の多さと安さは魅力的で、外勤や会合に向かう場合も欠かせない選択肢になっている」(上江洲所長)

 利用者が借りる場所と返す場所を自由に選べるシェアサイクルは、公共交通機関がないエリアの「ラストワンマイル」を補完する移動手段として注目されている。排ガスを出さずに健康増進にも資するメリットも指摘される。

 ユーバイクは2009年、台湾の自転車メーカー「ジャイアント」と台北市が提携し、11カ所に500台を設置する実証実験として始まった。その後、ジャイアント傘下の「微笑(ウェイシャオ)単車(ダンチェ)」が運営を担い、今では11県市などに拡大、設置ポートは7400カ所(8万7千台)と増加を続ける。

 行政と民間企業が普及に取り組む背景の一つに、オートバイ(原付バイク)への依存度が高い台湾の交通事情がある。台湾政府交通部によると、22年の調査で日常的な移動手段として最も利用されるのはオートバイ(45.8%)で、自家用車(25%)と合わせ7割を占める。

 歩行者がはねられる交通事故も多い。渋滞や環境対策を含む社会問題への対応は課題で、公共交通の利用を促そうとシェアサイクルの整備が進められてきた。

 各県市政府によって、ユーバイクの利用料を補助したり、他の交通手段への乗り換えを優遇したりするなど独自の施策を通じ利用促進を図っている。

 微笑単車によると、ユーバイクは各県市による入札契約で運営される。台北市では7年の契約期間が終了すれば、自転車やシステムなどの資産が市政府に返還される。入札による補助金で収支が成り立つ。シェアサイクルは企業利益より、公益性が重視されたモデルとなっている。

 同社は17年ごろに、那覇市内でユーバイクを展開する計画を県に提出したことがある。当時は翁長雄志知事も台湾を訪れ、ユーバイクに試乗するなど関心を寄せたが、採算面の課題が残り、沖縄進出には至らなかった。同社の担当者は「世界的に、行政の支援や官民連携がなければシェアサイクルの成功の可能性は低い」と説明する。

 (當山幸都)