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【深掘り】沖縄県産品の出荷、「羽田一極」変化の兆し ヤマトの専用機「フレイター」就航 市場開拓を後押し


【深掘り】沖縄県産品の出荷、「羽田一極」変化の兆し ヤマトの専用機「フレイター」就航 市場開拓を後押し ヤマトHDと日本航空グループが就航させた貨物専用機と関係者ら=11日午前、成田空港
この記事を書いた人 Avatar photo 當山 幸都

 物流大手ヤマトホールディングス(HD)と日本航空(JAL)グループの貨物専用機「フレイター」が4月から就航を開始した。

 那覇空港から北九州空港(福岡県)に日々1便が運航して沖縄の生鮮品などを空輸する。県内で午前中に収穫された作物を翌日には西日本の商圏に納品することが可能だ。出荷先として「羽田一極集中」の様相だった県産品の航空物流に変化の兆しが出ている。新たな需要創出や販路開拓につなげられるか注目される。

貨物専用機(フレイター)を活用した今後の戦略を語る沖縄ヤマト運輸の赤嶺真一社長=15日、那覇市内

 就航初日、4月11日午後の那覇空港。午前中に成田空港から到着したフレイターの初便にゴーヤーやパイナップル、カボチャといった県産品が積み込まれ、北九州空港へ飛び立った。「沖縄の産物や加工品の販路をいかに広げるか、従来九州方面への輸送手段の枠はあまりなかった」。沖縄に駆け付けたヤマトHDの長尾裕社長は、販路開拓につながる北九州への展開の意義を説明した。

「ブルーオーシャン」の可能性

 那覇―北九州の就航が正式に決まった1年ほど前から、ヤマトグループの沖縄ヤマト運輸では航空便の貨物スペースをいかに活用できるか検討を重ねていた。同社によると、那覇空港から本州向けのコンテナ搭載可能な航路は1日30便程度あり、全て旅客機が担ってきた。最多は羽田空港の22便で、伊丹空港は5便、中部空港は1便が運航。九州では福岡空港行きが4便あるが、機材繰りの関係でコンテナを積める便が暫定的に飛んでいる状況だった。

 羽田向け航路が圧倒的に多い中で、県産品の出荷は必然的に東京や関東を中心とする市場圏向けとなってきた。県内の事業者や生産者へのヒアリングから見えてきたのは、目が向けられていない西日本方面の「ブルーオーシャン(未開拓市場)」としての可能性だったという。
沖縄ヤマトの赤嶺真一社長は「既存の宅急便を積んで満載にしても意味がない。旅客機とパイを奪い合うのではなく、新しい荷物や市場をつくり出してこそ県経済に資する」と強調した。

工業製造品の積載も

 北九州の活用によって、羽田を経由してトラックで西日本方面へ長距離を輸送していた分の所要時間や陸送コストを圧縮できる。県産品の出荷先の選択肢が増え、本土との季節差も生かしながら付加価値の高い作物を、より高値で売りやすくなる。

 沖縄ヤマトは青果や花卉(かき)類の貨物取り扱いを想定。端境期で生鮮品の貨物量の落ち込みが予想される秋には、修学旅行シーズンで沖縄を訪れる生徒らの手荷物の輸送需要を見込む。

 将来的には工業製品の積載も視野に入れる。製造業の弱さが指摘される沖縄だが、赤嶺社長は一例として、九州と台湾をつなぐ形で、半導体産業の関連製品を貨物専用機で安定的に輸送する構想に触れ「沖縄の国際貨物ハブの次のステップに入っていく可能性もあるのではないか」と展望した。

 (當山幸都)