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サイバー防御法制化指示 首相、秋の国会提出視野に


サイバー防御法制化指示 首相、秋の国会提出視野に 能動的サイバー防御のイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は7日、サイバー攻撃に先手を打って被害を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」に関する有識者会議の初会合を首相官邸で開いた。岸田文雄首相は「わが国のサイバー対応能力の向上は急を要する課題だ」と述べ、会議の成果を踏まえて早期に関連法案を取りまとめるよう河野太郎デジタル相に指示した。秋の臨時国会への提出を視野に入れる。
 有識者メンバーからは憲法21条に定める「通信の秘密」侵害への懸念が示され、国会や第三者機関による監視や透明性の確保が提起された。
 能動的サイバー防御は、攻撃情報を検知するために監視し、相手側サーバーに侵入、ウイルスを使って無害化する対応。憲法21条に加え、不正アクセス禁止法といった現行法との関係の整理が必要になる。
 会合では(1)官民連携・情報共有の強化(2)悪用が疑われるサーバーの検知(3)侵入・無害化措置―を協議する3分科会の設置を決定。サイバーの専門人材育成も検討する。数カ月以内に意見を取りまとめ、政府に報告する方針を申し合わせた。河野氏は「国民の権利、利益の保護を図りながら、欧米主要国と遜色のない体制を実現しなければならない」と強調した。有識者からは「通信の秘密との関係を考慮しつつ、丁寧な検討が必要だ」との指摘や、通信への介入が過剰になれば、自由で民主的な社会の破壊につながりかねないとして「透明性の確保が強く求められる」との意見があった。
 官民連携に関しては、中小企業も含む対処能力の強化や人材交流の拡充を提唱。サーバーに侵入し無害化する対応を巡っては「防衛省・自衛隊、警察が保有する能力を生かすことが極めて重要だ」との言及があった。政府は能動的サイバー防御の司令塔として、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)の発展的改組を検討している。
 有識者はサイバー分野の専門家や弁護士、メディア関係者など17人。座長には元駐米大使で日本国際問題研究所の佐々江賢一郎理事長が就いた。
 通信の秘密 個人のプライバシーや自由を守るため、手紙や電話、電子メールといった通信の内容、相手などを第三者や公権力に知られない権利。憲法21条2項は検閲の禁止に加え「通信の秘密は、これを侵してはならない」と規定している。この規定に基づき、インターネット空間では電気通信事業法により、事業者は業務上知り得た他人の秘密を守らなければならないと定められている。通信内容の漏えいや不当な取得などの違反をすれば、懲役や罰金の刑罰が科される。