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中小企業の賃上げ支援 「新資本主義」改定 AI投資後押し


中小企業の賃上げ支援 「新資本主義」改定 AI投資後押し 新しい資本主義実現会議であいさつする岸田首相(左から2人目)=7日午後、首相官邸
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 政府は7日、成長戦略として掲げる「新しい資本主義実行計画」を改定し、中小企業の賃上げ支援を柱とした。賃上げは昨年の改定でも大きなテーマだったが、今春闘では大企業と中小企業の格差が依然目立った。今年の改定では下請法の運用厳格化を盛り込み、中小企業がコストの上昇分を価格に転嫁しやすい環境づくりを重視した。人手不足対策では、人工知能(AI)などを使った効率化投資を後押しする。
 7日開催の新しい資本主義実現会議で改定案を示した。2025年度予算編成や重要政策の基本的な指針「骨太方針」と併せ、21日の閣議決定を目指す。
 岸田文雄首相は会議で「来年以降に物価上昇を上回る賃上げを定着させるべく、取り組みを強化する」と強調した。
 賃上げ支援では下請法の運用基準を改正し、大企業がコスト上昇を把握しながら取引価格を据え置くといったケースを「買いたたき」になり得ると位置付けた。違反には指導や勧告などで厳しく臨み、立場の弱い中小企業が価格転嫁を進めて人件費を引き上げやすくする。
 労働生産性の向上には、省力化に役立つAIやロボットなど自動化技術の導入を促進する。業種を問わず幅広く使える製品をカタログ式の一覧から選べるようにし、企業側の手続きなどの手間を抑える。6月下旬に申請受け付けを始める。特に人手不足が深刻な運輸業、宿泊・飲食業を中心に利用を働きかける。
 若い労働者やデジタル化で仕事を失う恐れがあるホワイトカラーには、専門知識の習得やリスキリング(学び直し)を支援する。また年功序列型の賃金体系からの転換を図り、企業内で職務を明確にして成果重視で処遇する「ジョブ型人事」の拡大を促す。先行導入した約20社の取り組みを紹介する事例集をつくり、今夏にも公表する。

新しい資本主義 岸田文雄首相が唱える経済政策のスローガン。賃上げを含む「人への投資」や働く人のリスキリング(学び直し)、投資促進、デジタル社会への移行を柱とする。企業支援などを通じて経済成長を促し、そこから上がる収益を賃上げによって労働者に分配し、さらなる成長につなげる「成長と分配の好循環」を目指すとしている。