旅行や帰省などレンタカー需要がピークとなるお盆シーズン。レンタカー事業者にとってかき入れ時となる時期にもかかわらず、県内のレンタカー車両台数が過去最高となった今年は、車両供給の急増で価格競争が激化し、レンタカー価格が下落傾向にある。人件費や整備費などの高騰も重なり、県内のレンタカー事業者からは「このまま価格が落ち込み続ければ、経営が厳しくなる」と悲痛の声が上がる。
県内観光業の急回復が背景にある。コロナ禍のレンタカー不足から一変し、需要を取り込もうと、小規模・零細事業者の参入が相次いだ。2023年度の県内登録事業者数は前年度比約5割増の1885社となり、レンタカー台数は同2割増の5万1070台と、いずれも過去最多を更新した。
沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の調査によると、コロナ禍前の19年と比較し高い水準にはあるが、利用1件当たりのレンタカー単価が24年8月は3万3815円になる見込みで、前年同月の4万822円と比較し17.2%下がっている。
オープンカーを専門に約100台を扱う沖縄オープンレンタカー(那覇市)では、7~8月の売り上げが昨年の半分以下に。本庄曽治社長は「価格が低い方に客が流れてしまう傾向がある」と吐露する。さらに県内のレンタカー車両が増えたことで「整備工場も混み合い、時間がかかっている。その間は稼働できないので、売り上げにも影響している」と苦難を語った。
県内で1500台を持つ別のレンタカー事業者は、7月の平均単価が前年同期比で1件当たり約5千円落ち込んだ。「最近は車の供給は安定しているが、人手が足りず稼働できるかという問題もある」と話した。
県レンタカー協会に加盟している事業者は約60社で、全事業者の約3%。事業者が乱立し、価格競争だけでなく、実態把握ができない状況に業界には懸念も広がる。
同協会の與古田思好専務理事は「協会に加盟していない事業者は車が余っていて、価格を下げていると聞いている」と指摘し、事業者が増えていることについて「法律にのっとった貸し出しや安全な点検をしているか分からない状態だ。レンタカーが空港の渋滞の原因にもなっている。マナーなども懸念している」と話した。
(與那覇智早)