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ネット時代に「台風補償」で地元力発揮 潜在顧客の獲得へ次なる一手 OTS<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>8


ネット時代に「台風補償」で地元力発揮 潜在顧客の獲得へ次なる一手 OTS<Who強者How強者 沖縄企業力を探る>8 OTSの強みを語る東良和会長=8月16日、那覇市のOTS本社
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 1958年、慰霊のために沖縄の墓を訪れる人々の受け入れや、沖縄に駐留する米軍関係者の渡航を支援する目的で、沖縄ツーリスト(OTS)は誕生した。当時はまだ沖縄旅行が浸透しておらず、首都圏からの誘客のため、66年に東京営業所を開設。これをきっかけに旅行の仕入れから企画、販売までを社内で一貫して賄えるようになった。

 OTA(インターネットを通じて旅行商品を販売する事業者)が流行し、旅行は旅行社を通じてが当たり前ではなくなった昨今でも強さを発揮する秘訣は、レンタカー事業のほかにもある。地域事情を加味してカスタマイズされた「保証」がその一つ。欠航保証特約付き国内旅行傷害保険が付帯した個人型旅行「らんらんツアー」はその一例だ。

 らんらんツアーには、台風による航空機の欠航や遅延による保証が6月~10月の国内旅行には自動で付帯している。夏の沖縄旅行には、台風への心配が付きもの。予測できない台風への補償が付いた商品は広く評価され、利用者は累計300万人を超えた。

 東良和会長は「天気の日を保証することはできない。それを運が良かった、悪かったで済ませるのではなく、好ましくない環境をサポートするのが地元の旅行会社の務めだ」と話す。

 台風の影響による航空遅延、欠航時の宿泊費も保証する。航空会社のメンテナンスや滑走路閉鎖による欠航も補償対象だ。社員も自信を持って利用客に接し、補償の案内をすることができるので、トラブル対応で精神をすり減らすこともないという。

 雨の日の対応にも力を入れる。悪天候時に本店を訪れた利用客には、島ぞうりをプレゼントしている。「島ぞうり一つでばかばかしいが、『雨で靴が濡れて気持ち悪かったけど、マシになった』と思ってもらえるだけで良い」(東会長)。細やかな気配りが次の旅行の際にも選んでもらえることにつながっている。

OTS旅行部のスタッフとともにOTSでの旅行をPRする東良和会長(中央)=8月16日、那覇市松尾

 ユニークなテーマを設けた県民向けの日帰りツアーも話題を呼ぶ。山原の豊年祭を鑑賞するツアーや、県内の水不足解消を願ってダムや川を巡る「雨乞いツアー」など、ツアー内容は多岐にわたる。1台30席のツアーは年間約200回催行しているが、どれもほぼ満席だ。コロナ禍で県外客の8割を失ったが、「県民の県内旅行」を推し進めたことが功を奏し、日帰りツアーは維持できたという。

 目下、力を入れるのは23年1月から始めた「デジタルDMOプラットフォーム」。ホテルや観光施設・アクティビティーの公式ホームページを閲覧する潜在顧客の沖縄旅行を顕在化させる仕組みだ。地域主導型観光モデルとして各地の観光協会や観光施設などが、利用客のニーズに合わせて行程を自由に組み合わせて旅行をつくる。これまで旅行商品の作成には、各旅行社など仲介者から担当者につなぐまでに時間がかかる課題があったが、プラットフォーム上では利用客が直接アクセスできる。

 さらに旅行社の枠を超えた「予約システム開発会社」としての顔も持つ。公共施設向けの予約管理システム「SPMクラウドシステム」も展開が進む。紙での管理が多い公共施設をクラウド化することで、利用者や施設管理者の負担も軽減される。社内ベンチャーとして発足したグループ会社「OTS MICE MANAGEMENT(OMM)」が開発した。OMMは5月から東京本社の機能を強化し、現在は県内外23拠点、205施設まで広がっている。29年までに全国シェア1割の8千施設まで導入先を伸ばすことを目標としている。

 月次決算では計画の約4倍の早さで債務超過を解消したOTSの「V字回復」劇の背景には、絶えず方法を模索してきたアイデア力があった。

 慰霊訪問団の来訪から大型団体旅行、個人旅行と、旅行形態は多様化してきた。OTSは変化やそれぞれのニーズに対応し、旅行業の枠を超えた事業にも踏み出す。「観光産業は外需が相手だ」と話す東会長は、沖縄を超えて県外、海外客を見据えた今後のビジネス展開を構想する。 

(與那覇智早)

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