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【深掘り】釣りができなくなる…「生活かかっているのに」 渡し船の業者悲鳴 沖堤防規制 日釣振、一部利用解禁を要望 沖縄


【深掘り】釣りができなくなる…「生活かかっているのに」 渡し船の業者悲鳴 沖堤防規制 日釣振、一部利用解禁を要望 沖縄 那覇一文字へ向かう丸沖つりぐの渡し船。9月末で沖堤防への渡しは停止する=24日
この記事を書いた人 Avatar photo 島袋 良太

 10月から「一文字」と通称される沖堤防への遊漁船による渡しが規制強化される。釣り人への規制が続く釣り業界からは、安全対策に理解を示す一方、年々規制で釣り場が減り続ける状況に悲鳴が上がる。安全対策を取った上での沖堤防の一部区域の利用解禁や、「釣り公園」の整備などを求める声も上がる。 

 釣具メーカーなどで構成する日本釣振興会(日釣振)は今年8月、改正遊漁船法による規制強化を受けて森健水産庁長官らを訪ね、注意喚起の看板設置などを条件に釣り人の沖堤防立ち入りを認めるよう要望書を提出した。

 日釣振沖縄支部の伊佐功勇支部長は「一文字が使えなくなると、業者には死活問題だ。業界も釣り客が減らないか危惧している。自分たちも立ち入りできなくなることを直前にしか知らず、驚いている。本部や九州地区支部とも対応を相談していく」と話す。

 実際に遊漁船事業者の経営には影響が出ている。40年以上渡し船をしてきた丸沖つりぐ(浦添市)は、売り上げの8割を那覇一文字への渡しが占める。同店は「これまで『那覇港沖堤防』への渡しを明記して事業を届け出て、ずっと認められてきた。生活がかかっているのにあまりに突然だ」と困惑する。

 県内の釣り事情に詳しいおきなわ釣王国社の仲栄真修代表は「釣り禁止の漁港も増え、釣り人がどんどん締め出しを食らっている。『一文字』では釣り大会も開かれ、釣具店も客を盛り上げる販促の機会にしてきたが、今後大会を開くのも難しいのではないか。釣具店にも大きな打撃だ」と話す。「むちを打つばかりではどうなのか。危険だと規制するのであれば、釣り公園を造ったり、安全対策を条件に沖堤防の釣り人の利用を認めたり、前向きな施策も必要だ」と話した。

 県外では、大阪港などで救命設備の設置やルール・マナー順守を条件に、沖堤防での釣りを認めた事例もある。
 糸満漁港や泡瀬漁港の沖堤防を管理する県は、現状は「立ち入り禁止」だとの立場を説明した上で、「事業者からまだ相談も来ていないので協議内容は想定していない。ただ民間利用の目的で転落防止の柵などを公共施設に設置する場合は、さまざまな手続きも出てくるだろう」と話した。

 「那覇一文字」を管理する那覇港管理組合も「事業者から相談は今のところ来ておらず協議もしている状況ではないが、安全対策を取るにもハードルは高いだろう」と話した。
  (島袋良太)