世界最速を競え!マグロ早さばき対決 職人の腕とプライドが激突 観客あぜんの大会新記録 【どローカルリポート】沖縄


世界最速を競え!マグロ早さばき対決 職人の腕とプライドが激突 観客あぜんの大会新記録 【どローカルリポート】沖縄
この記事を書いた人 Avatar photo 高辻 浩之

 重さ20キロをゆうに超えるキハダマグロの尾と頭が切り落とされたかと思うと、あれよあれよと四つ割りの切り身と中骨に姿を変える。工程の全ては包丁一本で行う。那覇市の泊いゆまちで6月16日、世界でもまれなマグロの早さばき対決が開催された。

 出場者は市場の仲買人や水産会社の職員らで、マグロの扱いに手慣れたプロたち。腕とプライドをかけた最速のマグロ職人決定戦に、数百人の観客らは、かたずを飲み熱戦を見守った。

一度も冷凍されない生鮮「なはまぐろ」

水揚げされたマグロ
生鮮なはまぐろ

 那覇市の2021年のマグロ類水揚げ量は約4983トン。県内シェアの6割超を占め、県内一を誇る。拠点産地に認定され市魚もマグロだ。一度も冷凍されずにセリに出される「なはまぐろ」は生鮮マグロとして、県内外で好評を得ている。

 泊いゆまちでは毎年、6月の父の日に合わせマグロフェアを実施。本マグロの解体ショーや即売会などを通し「なはまぐろ」の魅力をアピールしている。なかでも盛り上がりを見せるのが、マグロ早さばき対決。主催者によれば、大会は世界でもここだけ。優勝者は世界最速の腕前になるという。

泊漁港のセリ

大会参加最年長 ベテラン職人VS特定技能外国人勢

泊いゆまちの當山さんの店

 大会参加者の中で最年長の當山清伸さん(51)は、泊いゆまちに店舗を構えるマグロ一筋の仲買人。水産業者の間では、マグロの扱いに長けていると評判だ。毎朝5時には市場で魚を競り落とし、店でさばく。當山さんにかかればマグロはあっという間に、おいしそうな切り身へと早変わりする。當山さんは「この世界に入って約35年。自分にとってマグロは人生のようなもの。ベテランなりの技術を見せたい」と意気込む。

 大会はコロナ禍をのぞき8回目。トーナメント方式で20~25キロのキハダマグロ1本を四つ割りの状態にするまでのタイムを競う。1分を切るかが勝負の分かれ目。洗練された技術に加え、数十キロのマグロをさばく体力が物を言う。見栄えやさばき具合なども審査され、減点もある。近年はインドネシアなどからの特定技能外国人勢らの優勝が続いている。

マグロ一筋35年、仲買人の當山清伸さん

驚異の大会新記録は、●秒

 當山さんは1分を切る55秒の好タイムを出し、予選、準決勝を勝ち上がり決勝へ進んだ。目を見張るのは包丁さばきだけではない。マグロをさばき終えると、黙々とまな板を拭き上げ、きれいな状態にして後続へと場所を譲る。職人の粋な計らいが光る。

 決勝は前大会優勝で沖縄に来て10年のユダ・マウラナさん(30)らインドネシア勢2人と競った。結果は、予選で35秒という驚異的な大会新記録を出したユダさんが41秒(減点+2秒)で連覇した。

 當山さんは減点なしの55秒で3位となった。當山さんは「これまで接点がなかった業者のさばき方も見ることができ、職人同士が切磋琢磨(せっさたくま)できる機会になっている。県民にマグロという食材の良さを再認識してもらい、産地であるマグロを生活の一部にしてほしい」と目尻にしわを寄せ、マグロの魅了をアピールする。