中部農林高3年の眞榮里優翔(まえざとゆうと)さん(18)は、牛に魅せられた高校生だ。夏休みの大半を牛舎で過ごし「家族と過ごす時間より、牛と一緒の時間が長い」と話す。
この夏、午前中は相撲部の稽古で汗を流し、午後は牛の世話に追われた。牧草の草刈り、牛舎の掃除など普通の高校生なら嫌がる作業を黙々とこなす。「牛の世話とデート優先するならどちらか」との問いに「牛」と即答する。
まさに推し活ならぬ「ウシ活」高校生。「とにかく牛の勉強をたくさんしたい」と手綱を強く握る毎日だ。
バスに揺られ約1時間半、牛舎に通う日々
眞榮里さんと牛の出会いは小学2年のころ。相撲大会の帰りに寄った闘牛大会で、迫力ある牛たちに心を奪われた。その大会の抽選会で、中古車1台が当選したことも牛好きに拍車をかけたという。
以来、那覇市の自宅からバスで1時間半かけ、うるま市石川の牛舎に通い、牛と触れ合う日々。通って10年になる牛舎の伊波盛明さんは「優翔はまじめで働き者。いつも牛に真剣」と信頼を寄せる。
相撲でインターハイ出場、全国一の経験も
もうひとつ、幼少のころから夢中なのが相撲。2023年、全国選抜の80キロ級で優勝し、大相撲の部屋から誘いもある実力者だ。この夏は大分県で開催のインターハイに出場し、団体戦では自分よりも重い相手を退け、白星を重ねた。大会期間中に「牛の試合が近いので、牛のことを考えていた」と話し、周囲からは苦笑いが漏れた。
インターハイ期間を除き、ほぼ毎日、牛舎で牛の世話に明け暮れた。「牛はたくさん食べ、よく眠るけど、そのせいで自分は寝不足だ」と笑う。遅い日は午後10時過ぎまで牛舎での作業は続く。
念願の牛主に
人よりも力のある牛を操るのは容易ではない。中学1年の時、暴れる牛に跳ね飛ばされ腰を骨折、2カ月の入院を余儀なくされた。「けがをして牛の怖さと強さを再認識した」と振り返る。
1年半前には、子牛を譲り受け念願の牛主となった。さまざまな牛と触れ合い、牛の成長を見守ることが一番の学びになるという。
夢は畜産でも闘牛でもチャンピオン
口数は多くない眞榮里さんだが、牛の話になると冗舌になる。高校卒業後は、畜産業を学ぶため県立農業大学校への進学を希望する。弱った牛が削蹄士(さくていし)の手入れで回復したのを目の当たりにし、削蹄士の資格取得も志すという。
「牛がきっかけで多くの人とつながり、たくさんの経験ができた。もっともっと知識を高めて畜産でも闘牛でも、チャンピオンを育て上げたい。中途半端にはしたくない、牛が大好きだから」と牛熱をたぎらせる。