年間延べ約7千人の釣り客が訪れる通称「那覇一文字」をはじめ、県内各地の沖堤防の利用が、10月から事実上不可能になる。
ほとんどの沖堤防は「立ち入り禁止」であるものの、釣り人の利用が黙認され、送迎する事業者への規制もなかった。だが北海道・知床沖の観光船沈没事故を受けて遊漁船法が改正され、「立ち入り禁止」区域に堤防管理者の同意なく釣り客を運ぶことができなくなるため、9月末で沖堤防への渡しを停止する事業者が相次いでいる。
津波対策などを理由に沖合に設置される沖堤防は、全国的に釣り客に利用されてきた。しかし改正遊漁船法は、遊漁船事業者が都道府県に提出を義務付けられる「業務規定」について、乗客を渡す先が立ち入り禁止地点でないことを事業登録の条件に加えた。
4月の改正法施行に伴い登録事業者は「業務規定」の再提出が求められ、期限は9月末となっていた。立ち入り禁止の沖堤防へ釣り客を運ぶ場合には、管理者の同意を得なければならず、違反すれば罰金や刑事罰もある。
「那覇一文字」など三つの沖堤防を管理する那覇港管理組合は、安全上の理由から沖堤防は「従来から立ち入り禁止だ」と説明した上で「安全が確保できないことには許可は難しいだろう」と見解を述べた。糸満市の糸満漁港、沖縄市泡瀬漁港の沖堤防を管理する県漁場漁港課も、同様に立ち入り禁止との立場を示した。
現状は安全対策が協議されておらず、同意を得ることは困難視されることから「業務規定」の提出に当たり、事業者は釣り客を送迎する場所の申告で「立ち入り禁止」の堤防の削除を余儀なくされているとみられる。
釣り具メーカーや釣具店などでつくる日本釣振興会の伊佐功勇沖縄支部長は「業界としても大変な影響がある」とし、本部や九州地区と連携し、国に対応の見直しを求めていく方針を示した。(島袋良太)