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【深掘り】沖縄の修学旅行バス手配は順調 県の人材誘致事業、早めの行程表などで奏功 イベント時は依然不安も


【深掘り】沖縄の修学旅行バス手配は順調 県の人材誘致事業、早めの行程表などで奏功 イベント時は依然不安も 駐車場に並ぶ観光バス=9月26日、糸満市西崎町(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 運転手やガイド不足から、ここ数年貸切バスの手配が行き詰まっていた10~12月の修学旅行繁忙期。今年はバス運転手やガイドの誘致に特化した県の事業などが功を奏し、受け入れが順調に進んでいる。6月頃で既に3千台足りないと推計されたが、「2024年問題」で業界が危機感を持ち、関係各社が行程表作成や送迎分担など連携した取り組みで改善につなげた。ただ、クルーズ船やイベント関連の送迎対応に間に合わない不安は依然残っている。

 コロナ禍の収束で、21年から修学旅行需要も回復。しかし運転手不足から台数確保に苦しみ、昨年は9月末までに1200台の手配が間に合わないなど、今年のシーズンに向けても業界から不安の声が高まっていた。

危機感

 時間外労働の上限規制が厳格化された「2024年問題」で人手不足がより深刻化することが予想されていた。これに危機感を持った業界は行程表の3カ月前提出ルールを徹底。旅行社と早めに情報を共有するほか、送迎を別会社で分担するなど昨年の教訓も生かし、今年は9月30日時点で10~12月のバスの未手配は103台にとどまっているという。

 恒常化する修学旅行のバス不足を受け、県は23年度に県外から人材を誘致するための予算を初めて計上。昨年は運転手とガイドを合わせ北海道などから53人を受け入れた。県観光振興課によると、昨年の事業予算を繰り越し、今年は10月3日時点で運転手50人、ガイド23人を受け入れる予定という。

 さらに8月には新たに、県バス協会や旅行社などで構成する貸切バス受入体制支援室を県の事業として立ち上げた。支援室は北海道5カ所で事業説明などを行い、来年度以降の運転手やガイドの手配に向けても取り組んでいる。

供給追いつかず

 昨年10月に貸切バスの料金が改定されたことに伴い、貸切バス専業の事業者の中には給与を上げ、新たな運転手を採用しているところもある。観光バス18台を所有するてぃーだ観光(糸満市)は、給与の5%のベースアップなどを行い、今年新たに5人の運転手を採用した。昨年は人手が足りず15台しか稼働できなかったが、今年は全車両を動かせる見込みだ。

 それでもコロナ禍が明けてクルーズ客やインバウンド(訪日客)も復活する中、修学旅行シーズンの貸切バスは需要に供給が追いつかないのが現状だ。県内バス会社関係者は「この時期は修学旅行を最優先に進めるため、ほかの依頼は後回しになっている」と漏らす。東京バスも運転手不足が深刻化し、一般団体の送迎やイベント関係のシャトルバスなども手が付けられないという。担当者は「夕食の送迎まですると翌朝に出られなくなってしまう。時間調整をしながらなんとかしたいが、難しいことも多い」とため息をついた。 

(與那覇智早)