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“過剰なサービス”見直し、欠かせない運賃の適正化<迫る24年問題・沖縄の現場から>下請けドライバー


“過剰なサービス”見直し、欠かせない運賃の適正化<迫る24年問題・沖縄の現場から>下請けドライバー 「2024年問題」をきっかけに適正な運賃へ見直しが進むことを期待するプログレス31の金城隆子社長=2月27日、西原町
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 呼び鈴を押しても応答がなく、一度で済むはずだった配達が滞る。宅配の再配達は、労働時間の規制が厳格化される物流の「2024年問題」にも関わる課題だ。

 下請け会社にとっては競争の中、荷主や店舗などエンドユーザーへのサービス過剰が収益確保を難しくしている。関係者は荷物を届けるサービスの在り方や運賃の仕組みに目を向け、24年問題をきっかけに改善へ議論が進むことを期待する。

 県内の下請け関係者や運転業務を担う労働者側からも県内は県外ほど長時間労働は深刻ではないとの見方が強い。一方で労務費や燃料費などをどう運賃に価格転嫁していくかは県外と同様に悩みの種となっている。

 ホームセンターの各店舗などへ納品業務などを請け負うプログレス31(西原町)。一般雑貨や衣服、建設資材など取り扱う荷物は多岐にわたる。創業当初はドライバーがコンテナを開けて手伝うなど運送業務に伴わない仕事を引き受けるなど過剰なサービスを提供していた。

 ひ孫請けまで手掛けるなど「必死」だったが、金城隆子社長は「そんなことしても意味がないとすぐに無理な安売りはやめた」と振り返る。

 だが、関係者は契約を打ち切られる懸念から下請けなど受注側が荷主や元請けに申し入れる「難しさがある」と声をそろえる。

 公正取引委員会と中小企業庁が公表した23年度の企業の価格転嫁状況に関する調査結果では、コスト増加などによる受注企業からの価格転嫁を「おおむね受け入れた」と答えた発注企業の割合は、道路貨物運送業が45・5%と全業種で最低だった。22年度より2・9ポイント悪化。受注企業の回答でも「おおむね転嫁できている」は21・3%にとどまり、22年度から改善したものの、わずか0・8ポイントの上昇だった。

 県トラック協会は県内も「同じ傾向」と指摘する。国土交通省は荷主への適正運賃交渉で参考指標となる「標準的運賃」の見直しで、4月から平均約8%の運賃引き上げや運送以外の業務について荷主から対価受け取り、下請け手数料設定などの実施を予定する。

 しかし義務づけではなく、「県内業者がどこまで交渉に入れるか」との不安を拭えていない。

 ただドライバーを供給できなければ荷主や消費者が影響を受ける。売り手市場で人手不足が深刻化する中、労働者の環境を整えるには運賃の適正化は欠かせない。

 金城社長は「宅配業務でも不在で二度三度と訪問しても無料なのはおかしい。タイヤも高騰する中、今後はさらに単価にこだわっていかないといけない」と述べ、ドライバー業務への理解が広がることを願う。

 「物流は血流と同じで、なくてはならないものだ。消費者も関係のある問題だ」

 (謝花史哲、普天間伊織)