「この5年間、働き方改革に適用できるよう必要な設備投資を関係機関とやれるだけやってきた。しかし、厳しい」。南大東村で製糖を営む大東糖業の玉城雄一常務は、苦しい胸の内を明かした。1日から製糖業でも時間外労働に上限が課されることになった。規制の影響が大きいなどの理由から5年間の準備期間が設けられていた。それでもなかなか準備が進まず、規制の順守が求められる来期に向けて危機感を強めた。
大きな課題は製糖期の12月~翌年3月に雇用する季節労働者(季節工)の確保。大東糖業は職員で不足する人員を季節工で補っている。工場を24時間稼働させるためだ。
サトウキビは収穫後すぐに鮮度が落ちるため保存ができず、なるべく間を置かず粗糖に加工しなければならない。工場はボイラーを使用。工場の再稼働を繰り返すと燃料コストがかかってしまう。そのため製糖期は、ほぼ休みなく工場を動かしている。
働き方改革関連法の施行を受け、職員と季節工の約80人で2直2交代の操業から、数年前に職員の増員や3直3交代シフトを試行した。だが玉城常務は「必要最小限の人数でやっていた。1人でも欠けるとシフトが維持できない状況だ」と漏らした。
機械の監視などが主な業務に、2直2交代では1人当たり12時間勤務になっていた。残業手当が多く、短い期間でまとまった収入を得られることに魅力を感じている人が多かったという。
ただ新たな労働規制の適用により、3直3交代や3直2交代でシフトを組む必要が出てくる。現在の人員から計算すると約40人の増員が必要になる見通しだが、規制の導入は残業手当の減少につながるため、季節工の応募が減少する心配が頭をもたげる。
機械化で生産性を高めたくても全工程の自動化には10億以上の設備投資が必要となることから、年次的な更新にとどまっている。その中でも少ない人員で操業できるよう、自動化設備を取り入れた省力化も行ってきた。人を確保するために社宅や季節工の宿舎を増設するなどもしてきた。
今期の製糖は3月いっぱいで終了し、今年12月から始まる来期からは本格的に上限規制が適用される。たとえ人材確保ができなくても工場を止めることはしないという玉城常務は「安定操業のため、さらなる人材確保の取り組みを進めていくしかない」と訴えた。離島地域の産業を支える工場の稼働。「何としても続けないといけない」。製糖の「2024年問題」にはさらなる支援策が求められている。
(玉寄光太)
(おわり)