北中城村と佐敷中城漁業協同組合北中城支所、特産品開発などのラクセスイノベーション(沖縄市)は、アーサ養殖に使っていた村内の干潟で、新たな産業としてカキ養殖の実証実験を始める。
総務省が推進する「副業型地域活性化起業人制度」を活用。かごを使ったカキ養殖に取り組む徳島県の水産ベンチャー企業リブルの早川尚吾代表を受け入れ、特産のアーサと二本立てとなる産業の確立を目指す。
国内のカキ養殖はいかだにカキの種などが付いた縄などをぶら下げる垂下式が主流の中、リブルはかごを使うシングルシード方式を手掛ける。今回は美崎地区で100平方メートルほどの干潟を活用し、40~50個のかごを設置する。来年3月までカキ2千~3千個の規模で実施する。
シングルシード方式は、かごに稚貝を入れて潮の干満を利用して、プランクトンなどのえさが少ないきれいな海でカキを「小さいうちから鍛えるように」育てるという。カキの生育状況確認など現地の作業は漁協とラクセス社が手掛け、リブルが海洋や育成状況などデータ蓄積、解析を遠隔で行う。
同村のアーサ養殖は海の環境の変化や漁業者の高齢化などで生産量が年々減り、ピーク時の40トンから今年は9トンと減少している。新たな漁業就業者の創出も期待され、同村の比嘉孝則村長は「今までアーサもやってきたが、栽培漁業への期待は高まっている。第一次産業の衰退の歯止めとしていただき、発展につなげてほしい」と期待した。
事業を担うラクセス社の照屋亮取締役、佐敷中城漁協の岩元清一北中城支所長らも「将来はアーサと並ぶような商品にしたい」などと意欲を述べた。
活性化起業人制度は、地方自治体に企業人材を派遣し、専門の知見を生かした地域課題に取り組み活性化につなげる事業。今回は2024年度から制度対象となった社員の個人副業型として県内では初の事例で、3者が7日、早川代表へ委嘱状を交付した。早川代表は「水産業を定着させ大きく育てて、多くの人に目を向けてもらいたい。沖縄の海にもカキを根付かせ、連携しながら私たちも成長、精進していきたい」と抱負を述べた。
(石井恭子)