prime

足るを知ること 岩渕裕子(沖縄ガールズスクエア代表) <仕事の余白>


足るを知ること 岩渕裕子(沖縄ガールズスクエア代表) <仕事の余白>
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 20代前半、一人で子供を育てると決意し、県外から沖縄に戻ってきた。資格も特技もなく、特に夢もないまま、生活を立て直すために毎日働いていたが、どこか満たされない思いが常に心にあった。

 そんな時、職場の方から「女性の起業支援を一緒にやらないか」と声をかけられた。「同じ目線で女性たちの悩みを共に考えてほしい。固定概念がない方がいいから」と言われた。知識も経験もない自分に、起業を目指す人たちの力になれるとは到底思えなかったが、その言葉に背中を押された。

 女性たちの声を聞き続けるうちに、大切なことに気づいた。それは、特別な資格や大きな夢がなくても、今の自分にできることがあるということだった。自分を受け入れ、認めた時、不足に焦るのではなく、「今の自分」で誰かの役に立てていると実感できた。それが私にとって最初の一歩であった。そして、その一歩からやりたいことが明確になり、起業支援への情熱を持つきっかけとなったのだ。

 この経験を通じて、私が周りの女性たちに伝えたいのは、「自分自身を受け入れ、足るを知ること」である。置かれた今の状況で、できることを見いだして行動に移してみることが、その先の価値を切り拓(ひら)く第一歩となり、新たな可能性や未来につながる。私もそうであったように、自分の中の価値を見いだし、夢や目標を見つける後押しをしていきたい。その思いで、これからも女性たちの支援に携わり続けていこうと思う。

岩渕 裕子 いわぶち・ゆうこ

 1983年生まれ。那覇市出身。2012年設立、女性の起業応援コミュニティー「沖縄ガールズスクエア」代表。起業支援を通して、女性の活躍を支える仕組みづくり、まちづくりに奮闘中。内閣府沖縄振興審議会委員。沖縄県男女共同参画審議会委員。八重瀬町商工会理事。