3月8日は国際女性デー。日本には今もさまざまなジェンダー格差があり、四年制大学の進学もその一つ。昨年、東京大の学生が行った調査では「女子は地元(で進学)」との意識の根強さも浮かんだ。「地方女子」を阻むハードルとは?
「高校受験では男女が野心的に進学校を目指すのに、なぜ大学受験で女子は控えめな選択をするのか」。東京大の江森百花さん(23)=静岡県出身=は高校時代、こう感じていた。男子は浪人をいとわず東大を狙っていたが、女子は浪人を避けて志望校を低めに設定しているように見えた。
1浪して大学に入り、東京出身の女子の同級生に話すと驚かれ「価値観の差」を実感した。「なぜ地方の女子生徒は東大を目指しにくいのか」と疑問に思い、ジェンダー格差を解消したいと2021年、友人らと学生団体「#Your Choice Project」を設立。昨年、各地の進学校の高校2年生を対象に意識調査を行った。
「偏差値の高い大学に行くことは自分の目指す将来にとって有利と思うか」と聞くと、首都圏(1都3県)は男女の回答に差がなかったが、首都圏以外の地方では女子が男子より顕著に低かった。
大学選びでは地方の女子は男子より「実家に近いこと」を重視。回答は保護者の期待に影響を受けており、「強く『地元に』と言われていないと思うが、無意識に親の考えを内面化している可能性がある」と江森さん。
団体は意識格差だけでなく、ロールモデルの少なさを含む情報格差にも着目。地方の女子高校生の受験を東大生の女子がサポートする仕組みも作った。江森さんは「東大進学が必ずしも良いわけではなく、志望校の選択段階から存在している格差が課題です」と話す。
そもそも地方女子の進学には制限が課せられやすいと分析するのは、寺町晋哉宮崎公立大准教授(教育とジェンダー)。23年度の全国の四年制大学進学率のジェンダー格差を調べると、女子が男子を超えたのは徳島のみ。男子よりも低く、差が大きかったのは山梨(15.5ポイント)、埼玉(11・1ポイント)、北海道(9.6ポイント)だった。
進学費用の負担の重さや学生の受け入れに限りのある地方大学の現状、家庭の影響などから「地方女子は男子や大都市女子に比べ、進学に強い意志が求められやすい」と指摘する。自ら選んでいるようでも、家族や性別、地域などの社会的状況に影響されている可能性があり、「学費の負担軽減などでハードルをなくすべきだ」と語る。
他方でこうした議論では大学は進学すべきものとの認識が強化されることも危ぶむ。「進学を選ばない人、選べなかった人が地方社会を支えているのも事実。そうした人も安心して暮らせる社会の基盤こそが必要です」