学校現場における新年度スタートの4月はかなり忙しい。各種会議や教室環境の整備、学習指導・生徒指導の準備等、先生方は、校長の学校経営方針の下、児童一人一人のことや学級・学年全体のことを常に考えながら取り組んでいる。
私は校長として先生方に「まずは児童理解をしっかり行ってほしい」とお願いする。それは、これまでの状況や現状を把握していないと、適切な学習指導や生徒指導等を行えないからだ。
16年前、私が最後の学級担任として研究授業を公開した時、授業研究会の指導助言者だった上智大学教授の奈須正裕先生から「石川先生は、児童理解をどのように捉えていますか」と聞かれたことがあった。私は戸惑いながらも「児童の良さや困り感を知ることだと思います」と答えた。奈須先生はうなずきながら「そうですね。それを知ることは大切です」とおっしゃった。
私は間違っていなくて良かったとほっとした。しかし、奈須先生は「2年生は7歳か8歳ですよね。石川先生は子どもたち一人一人が背負ってきた7年間、8年間の人生を知っていますか」と続けた。
「私は教師であればその子が背負ってきた人生を理解した上で、日常の学習指導をしてもらいたい」「その子がどのような育ちをしてきたのか。例えば3人きょうだいの2番目だから、人前では控えめだけどその壁を超えたいと思っているとか」「(授業などの際)だから、今この場面で意図的にその子を指名するんだと言える教師であってもらいたいのです」。奈須先生の言葉は今でも鮮明に覚えている。
「児童理解」。児童に寄り添う本当の意味をこれからも先生方と共に考えていきたい。
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琉球大学付属小学校校長。県小学校特別活動研究会会長、日本特別活動学会九州・沖縄理事。沖縄戦の実相や継承のあり方を学ぶ学習会にも参加している。1966年生まれ、那覇市出身。