prime

教育の改革 答えは地域に スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ>


教育の改革 答えは地域に スプリー・ティトゥス(琉球大学教育学部准教授) <未来へいっぽにほ> スプリー・ティトゥス
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 前回、中央主義的な教育の課題と地域で学ぶ機会減少の問題を示したが、今回は教育をどう改革できるかという問いから始める。

 答えは学校よりも地域にある。教育の一部を地域の主体に戻せば、学校現場にあふれる課題を解決でき、地域課題に向き合う人材育成にもなる。それには国の共通基準が必要だが、中央の見方に委ねると、民衆的な力も、多様性も、イノベーション力も落ちる。

 ここで考える地域主体とは、一方的にリードするような存在ではなく、小さな希望や疑問を持ち、地域で活動する人々のことだ。最近教育に関して地域で新しい風が吹いている。フリースクール、子どもの居場所づくり、学校のPTAなど、主体的で新しい発想を持つ人たちが増え、行政側もそういう個々の力を受け入れる能力が高まってきているので、学校に集中しすぎた教育を地域に取り戻す体制が準備できつつある。

 理想像だが、私たちの研究実践も含めて個々で頑張る人たちを横につなぐことができれば、数十年後には、子どもたちが週2日程度は学校から飛び出し、年齢と教科を超えて、多様な体験をしながら地域でさまざまな課題に取り組めるかもしれない。また、高齢化に向かう社会に必要なイノベーション力と創造力も得られるだろう。

 私たちが研究で実践している「地域主体教育」とは、沖縄の豊かな地域の文化づくりと同じように、地域の皆さんが主体的に関わりながら構築される教育を意味している。創造性のプロと言えるアーティストの関わりにより、地域の新しい可能性を開く創造的な対話と制作活動の実践についても今後、紹介していきたい。

スプリー・ティトゥス

 琉球大学教育学部准教授。ベルリン芸術大で建築の修士課程を修了した。沖縄を拠点にアート・まちづくり・教育を横断的に結びつける国際的な活動を展開している。1966年生まれ、ドイツ出身。