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ソフトスキル スプリー・ティトゥス(琉球大教育学部准教授) <未来へいっぽにほ>


ソフトスキル スプリー・ティトゥス(琉球大教育学部准教授) <未来へいっぽにほ> スプリー・ティトゥス
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 2001年に琉球大学教育学部で採用され、元々教育学系ではない私が沖縄で教育に長年携わることになった。特色の強い地域文化を持つ沖縄から、日本の学校教育を見ているとモヤモヤする。

 中央主義的な学校教育の中で、沖縄が重い課題と向き合っていることに初めて気付いたのは07年ごろだった。当時、全国学力テストは沖縄県が最下位で、県民はショックを受けた。既にキャパオーバーの学校現場は学力向上のプレッシャーが増加し、学校内の雰囲気はより競争的になった。教師はより点数を重視し、子どもたちは閉じられた空間の机の前でさらに多くの時間を過ごしている。

 しかし、沖縄が「学力ランキングのはしご」を必死に登ろうとすれば、独自の力を表す別のはしごを急激に下りる危機を感じている。

 沖縄では特に目上の人たちの感性が鋭く、共感力、コミュニケーション能力にたけ、人の心を察する力のある人が多い。地域行事やコミュニティーづくりの伝統的な形態を調べると、女性がリードしていたユニークで創造的な行事が多くあり、地域文化や育成に大きな役割を担っていただろう。このような地域主体の教育文化は、ランキングや数値評価を重視する学校制度によって脅かされている。

 経済が重視され、競争が激化する現代社会では、より人間的でソフトな力がますます必要になり、しばしば耳にする「ソフトスキル」という言葉が、その変化の象徴だ。課題は多いが、沖縄は私が経験した中で最も人間的な社会の一つであり、ソフトスキルの面では間違いなく日本のランク最高位で、世界的にもトップレベルである。

 このコラムでは地域主体の側面から沖縄の教育を再考察したい。

スプリー・ティトゥス

 琉球大学教育学部准教授。ベルリン芸術大で建築の修士課程を修了した。沖縄を拠点にアート・まちづくり・教育を横断的に結びつける国際的な活動を展開している。1966年生まれ、ドイツ出身。