うるま・赤道小が通知表を廃止、県内初 児童の習熟度を反映した「個票」導入 教員の負担軽減にも 沖縄


うるま・赤道小が通知表を廃止、県内初 児童の習熟度を反映した「個票」導入 教員の負担軽減にも 沖縄 イメージ
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 【うるま】うるま市立赤道小学校(城間修司校長)は本年度から、通知表を廃止し、児童それぞれの習熟度を反映した「個票」を導入することを決めた。教員が通知表を作成する時間を児童と向き合う時間に充て、個別の目標設定を設けて児童に自ら考え行動する自立性を促すことが狙い。教員の負担軽減にもつながる。通知表の廃止は県内では初。PTA会長や地元自治会長で構成する学校運営協議会で協議を重ね、保護者説明会での了承を得て、本年度から全学期を通じて個票に切り替える。 

(玉城文)

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 新たに導入する個票は、授業で行うテスト結果を基に、知識や思考、表現といった各項目の数値を棒グラフで可視化することで、達成度を客観的に把握できる。個票から児童がそれぞれ学習目標を設定し、苦手項目の克服に生かす。

 1学期は保護者を含めた三者面談で、個票から判明した課題を共有し、家庭学習ノートを使って目標や計画を立てる。2学期は教員と児童で、3学期は児童自身にこれまでを振り返ってもらい、評価してもらう。

 個票の結果を把握し、目標を立てることを繰り返していくことで、児童の自己評価する力を養う。

 近年、教員の長時間労働が離職率の高さや教員不足の要因となっていた。通知表の作成は過重労働の一つと指摘されており、学期末には残業時間が大幅に増える傾向がある。

 赤道小学校は学校経営方針に「質の高い教育の実現」「働きがいのある職場」を掲げ、教員の負担軽減や効果的な教育活動を模索。その一環として、通知表を廃止し個票へ移行することを段階的に進めてきた。

 2022年度に、児童の学校での様子を記す「所見」を通知表から削除。23年度には、2学期のみ通知表から個票に変更した。保護者説明会で了承を得て、教員対象のアンケートでは好意的な意見が上がった。

 通知表作成は法的に根拠はなく、校長の判断に委ねられている。

 通知表を廃止し、児童の「個票」を導入する赤道小の教諭は、全国でも珍しい取り組みを「児童と課題を再確認し合える」と評価する。県内の小学校教諭からは「子どもの成長がより伝えられる」「親としては所見は楽しみの一つでは」といった意見が上がった。

 赤道小に5年勤める40代の男性教諭は「(個票は)児童と課題を再確認し合える」と話す。褒める点と課題を同時に伝えることで「より子どもたちの心にとどまる」と利点を説明した。通知表の作成時間が省かれたことで「体力的、心理的に負担が軽くなった」と教える側のメリットも高かったようだ。

 赤道小が行った教員対象のアンケートにも「児童が自分の課題を意識し学習していた」「子どもとじっくり話せた」「次に何をするか、教師も子どもも見通しが持てる」といった賛成意見が並ぶ。

 うるま市内の別の小学校に勤める40代女性教諭は「通知表の3段階方式では子の成長・苦手は分からない」とばっさり。自身も日々の業務に追われ「省けるものは省いて、授業の準備時間にあてたい」と嘆いた。「通知表の所見を楽しみにしている親もいるのでは」と話すのは50代の女性教諭。同時に所見に多くの時間を費やす同僚を側で見ており「業務が足されていく現状は限界だ」とも話した。