10年後、20年後の社会はどのようになっているだろうか。今以上に変化のスピードが速く、問題の解決策の予測さえ困難な社会になっているだろう。教師は子どもたちが将来、そのような社会でもたくましく生きられるように、日々、学ぶことの楽しさや分かることの喜び、自分自身の成長を実感できるためのよりよい実践を積み重ねている。子どもたちが教室や学校で学び考えたことを日常の生活場面においても生かすことができ、自ら学び続けられるようになることを目指している。
以前勤めていた学校での経験を紹介する。放課後、ゴミ袋を持って、校長室を訪ねて来た姉妹がいた。姉は4年生、妹は2年生だった。姉の社会科のごみ処理場見学がきっかけで、週に2回ほど、学校周辺のごみ拾いをしていた。「私たちがごみ拾いをして地域をきれいにしたら、ごみを捨てる人がいなくなると思う。だから続けています」と話していた。
授業で学んだごみ問題を自分事として捉え、その改善に向けて行動する姉妹。私はうれしくてそのことを「学校だより」に掲載した。すると翌週から、姉妹と友達数人がごみ拾いをしている姿が見られた。姉妹の姿が友達の心を動かし行動にもつながったのだ。どちらかといえば控えめで消極的だったというその姉妹は、その後もどの学習場面でも常に課題意識を持って取り組むようになっていったようだ。
子どもはいつ、どの場面で意欲スイッチが入り変容するのか分からない。われわれ教師は、あの姉妹のような自ら学び続ける姿を見逃さず、たくましく生きる力につなげる粘り強い指導をしなければならないのだ。
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琉球大学付属小学校校長。県小学校特別活動研究会会長、日本特別活動学会九州・沖縄理事。沖縄戦の実相や継承のあり方を学ぶ学習会にも参加している。1966年生まれ、那覇市出身。