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多子世帯への進学支援 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ>


多子世帯への進学支援 久米忠史(奨学金アドバイザー、まなびシード代表取締役) <未来へいっぽにほ> 久米忠史
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 県高等学校PTA連合会の後援を受け、日本学生支援機構の奨学金申請の実践編となるセミナーを毎年6月に行っている。今年も2千人近くの保護者が参加し、奨学金に対する沖縄の関心度の高さを改めて実感した。

 4月のコラムでも書いたが、給付型奨学金と学費の減免支援が受けられる、高等教育の修学支援新制度の採用率は沖縄が最も高い。非課税世帯など家計事情が優先されるが、本年度からは扶養する子が3人以上の多子世帯や、私立理工農系に進学する年収600万円ほどの中間所得層世帯まで対象が拡充された。

 2022年の厚労省・国民生活基礎調査によれば3人以上児童がいる世帯は12.7%に過ぎない。児童1人(49.3%)、同2人(38.0%)と比べて最も少ないが、出生率全国1位の沖縄では状況が異なる。県内の割合を示す公式データを確認できなかったが、ある高校での講演の際に3人以上のきょうだいがいるかと聞くと、半数以上が手を挙げた。これは読者の肌感覚としても同感できるのではないだろうか。

 来年度からは、所得制限なしに多子世帯の支援拡充が予定されている。国公立大は実質無償、私立大は入学金26万円、授業料70万円が減免されるというものだ。冒頭の奨学金セミナーでも多子世帯支援に関する質問が最も多かった。

 国の重要課題に少子化対策が掲げられる中、沖縄は最も希望が持てる地域と言えるだろう。多子世帯支援を含む、国の高等教育無償化の流れは、沖縄にとって大きな追い風だ。とは言っても国の支援策は完全ではない。その課題点をどう補うのか、県内市町村の取り組みが期待される。

久米忠史 くめ・ただし

 奨学金アドバイザー。まなびシード代表取締役。2004年から沖縄の高校で始めた保護者・高校生向けの奨学金ガイダンスが好評で、現在は全国各地で講演を行う。1968年生まれ、和歌山県出身。