「琉球大学博物館(風樹館)に来たことがある人?」。これは、イベントなどを開催する際に、冒頭で私から参加者へ質問する問いだ。来たことがあると答えてくれる人はわずかで、まだまだ認知度は低い現状がある。中には、琉大の卒業生であるにもかかわらず、イベントに参加して初めて知ったという方も少なくない。
風樹館は琉大がまだ首里にあった1967年に開館した。農学部付属の農業博物館としてのスタートだった。当時、国内の大学、とりわけ地方大学には付属の博物館はまだ少なく、日本のユニバーシティー・ミュージアムの草分け的存在となった。
このような大学博物館が沖縄に造られた背景には企業家の金城キクさんの存在がある。金城さんは戦後の沖縄の復興に貢献したいという思いから、働く女性のための保育園の開設や、県出身女子学生のための学生寮を東京に造るなど社会福祉事業に尽力された。風樹館も金城さんが代表を務める金城キク商会(金城報恩会)からの寄贈によって造られた。沖縄の復興のためには、こどもや若者が学べる場が必要ということで「博物館」を造られたのだと思う。
現在の風樹館は、場所を西原町に移し、建て替えも行ったが、風樹館という名前を残している。歴代の学芸員たちが当時の思いを引き継ぎ、沖縄の教育のために活動を続けてきた。私もこの思いを引き継いで、取り組みを続けていきたいと思う。
風樹館では11月16日の大学院生による展示制作発表会をはじめ、地域のこどもたちに向けたイベントを企画している。SNS等を確認いただき、多くの方にご参加いただけると幸いだ。
琉球大学博物館(風樹館)助教。琉大理工学研究科で博士号(理学)を取得。幼少期に始めたチョウの採集がきっかけで、チョウを使った環境評価などの研究に関心を持つ。1988年恩納村生まれ、宜野湾市在住。