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音楽、そして恩師との出会い 屋比久理夏(県立芸術大学准教授) <未来へいっぽにほ>


音楽、そして恩師との出会い 屋比久理夏(県立芸術大学准教授) <未来へいっぽにほ>
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 打楽器を演奏して30年余。私の音楽との出会いは、小学校の音楽の授業である。当時、「オレたちひょうきん族」というお笑い番組で使われていた、ロッシーニ作曲「歌劇『ウィリアム・テル』序曲」を授業で初めて最後まで聴き、衝撃を受けたことを今でも覚えている。そのことを音楽の先生に話すと、後日、曲をダビングしたカセットテープをくださり、うれしくて私は家で何度も聴いた。

 冒頭の金管楽器の華やかさ、オーケストラの響きに魅了された私は、中学で吹奏楽部に入部。フルートを希望するも打楽器の担当になった。不本意なのでさほどやる気もなく部活を続けていたが、中学2年の冬に顧問の先生の勧めでなぜかソロコンテストに挑戦することになり、このことが私の人生を大きく変える契機となる。

 先生の根気強い指導のもと、緊張の中で迎えた本番。ステージ上でスポットライトを浴び震える手で発した最初の1音。次第に自分の音楽が開放され会場全体の空気を巻き込んでいく感覚。それは初めて自分を表現することの楽しさ、喜びを知った瞬間だった。

 それ以降、私は急速に打楽器にのめり込んでいく。高校に進学後、音楽の道へ進むかどうか悩む私の背中を押してくださったのは中学、高校の先生であり、あの頃の決心が今の私につながっている。

 人生を形作るのは多くの出会いと経験だと思う。時を経て今は私も後進を教える立場にいるが、恩師のように生徒の可能性を信じ、彼らが自分の人生を切り開くお手伝いができればと強く思う。私自身も学び続け、音楽を通じ生きる上で大切なことを次の世代へ伝えられたら幸いである。

屋比久理夏 やびく・りか

 県立芸術大学准教授、開邦高校非常勤講師。県芸音楽学部卒業、同大学院を修了。第1回日本マリンバコンクール第3位。学生、生徒を指導しながら、演奏者としても活躍。1975年生まれ、読谷村出身。