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「人との関わり」で成長 真和志高校 写真甲子園、15年ぶり準V


「人との関わり」で成長 真和志高校 写真甲子園、15年ぶり準V 準優勝の発表があった表彰式直後、喜びをかみしめる真和志高校の3人を笑顔でたたえる審査委員の浅田政志さん(奥中央)、ホームステイ受け入れ先の森田るり子さん(手前)=2日、北海道東川町
この記事を書いた人 Avatar photo 西田 悠

 北海道を舞台に全国の高校生が写真の腕を競う第31回全国高校写真選手権大会「写真甲子園2024」本戦が7月30日~8月2日に開催された。過去最多の604校による予選を勝ち抜いた18校54人が結集。沖縄からは真和志高校(松長洋汰郎さん、村山碧さん、エスピノーサ・アンジェラ・愛梨さん)が出場。見る者の心を潤す柔らかな作品で15年ぶりの準優勝を勝ち取った。慣れない土地でのトラブルにも見舞われた3人による、紆余曲折(うよきょくせつ)の旅路を振り返る。

 真和志が掲げたチームテーマは「人との関わり」。大会前までは人を被写体とする撮影が苦手で、チーム内や撮影する相手とのコミュニケーションが課題になっていた。しかし、地域の人と交流を重ねる中で、沖縄で培った“被写体と遊ぶ”ような感覚で撮影する技法を思い起こし、見る側の心に迫る数々のシーンを収めるようになっていった。

ファーストステージ作品「あなたにはさむシオリ」(8枚組みのうちの1枚、写真甲子園実行委提供)

トラブル続発 メモリーカード手に走る、走る

 ただ、期間中はトラブル続きだった。撮影初日にはカメラバッテリーの充電器を前日の宿に忘れ、ファーストステージはバッテリーの残量を気にしながら撮影した。撮影地を巡回するバスの最終便に乗り遅れそうになり、メモリーカードをリレーの「バトン」のように、足の速い松長洋汰郎キャプテン(3年)へ託す場面もあった。
 「メモリーがない!」―。エスピノーサ・アンジェラ・愛梨さん(2年)は、撮影2日目のファイナルステージで撮影した写真のメモリーカードを巡回バス車内で一時紛失した。夕日が傾く中、運転手やスタッフと共に懸命に探した。制限時間の数分前に車内でカードを見つけると、ホッと胸をなで下ろした。

制限時間が迫る中、走り出す(右から)エスピノーサさん、村山さん、松長さん=7月31日、北海道美瑛町

夢の舞台

 撮影中は被写体を見つけられず、それぞれカメラを置いて口を閉ざし、ぼうぜんと過ごす場面も。村山碧さん(3年)は「(沖縄と北海道で)気候の違いもあり、初日の疲れを引きずってしまった」と振り返る。それでも、初日は深夜1時まで話し合うなど、3人の思いは大会を通して静かに共鳴し続けた。
 モノクロの作品で勝負に出たファイナルの公開審査。想像以上にいい写真が集まり、松長さんは「これはイケる」と期待を込めた。表彰式で発表された結果は準優勝。「本戦は夢の舞台」と思い描いていた3人の笑顔がはじけた。

 顧問の佐々木郁也教諭(24)は「上手くいかずふさぎ込む場面もあったが、自分たちが置かれている状況を理解して立て直していた。精神的な成長を感じた」とたたえた。
 会場には、2006年に真和志のメンバーとして優勝し、現在は同校で非常勤講師を務める写真家の北上奈生子さん(34)の姿も。北上さんは「3人はすごく成長した。この経験は必ず今後に生きる」と、自身のこれまでと後輩の勇姿を重ね合わせた。 (西田悠)