韓国には「成功したオタク」という意味を表す「ソンドク」という言葉がある。この作品は、監督本人が大好きだった「推し」による性犯罪が発覚し、混乱しながら撮ったセルフドキュメンタリー。
推しに顔を覚えられ、番組共演まで果たしたソンドク人生が一転、彼が犯罪者となった今、本人いわく、私は失敗したオタク。傷に塩を擦り込むように、彼女は裁判の傍聴へ出向き、怒りと悲しみを言葉で紡ごうと試みる。同じように推しに裏切られたと心を痛める仲間にもカメラを向け、本当の「ソンドク」の意味を見いだそうとする。
幸せホルモンが分泌され、仕事や勉強のモチベーションになり……。昨今では、お堅いニュース番組でさえ避けて通れなくなった「推し活」。でもここには、報道されない真実があふれている。許せないと批判しつつ、グッズを見れば思い出話になり、気づけば自慢大会。一方で推した自分も加害者だと苦しむ。推した彼女たちしか語れないいとおしい言葉たちが紡がれる。監督はオ・セヨン。(桜坂劇場・下地久美子)
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「成功したオタク」 桜坂劇場・27日公開 報道されない真実<シネマFOCUS>
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