沖縄在住の若手劇作家・兼島拓也の作品で、第30回読売演劇大賞優秀作品賞などを受賞した演劇「ライカムで待っとく」が6月22、23日、那覇市の那覇文化芸術劇場なはーとで上演される。物語は、60年前の沖縄で起きた米兵殺傷事件の容疑者が自分の妻の祖父だったことを知った雑誌記者が、次第に過去と現在が混然となった不可解な状況下で沖縄の「決まり」の中に飲み込まれていく。再演について、脚本の兼島と演出の田中麻衣子に話を聞いた。 (聞き手・田吹遥子)
―2022年の初演から1年半で再演が決まった。5月24日~6月2日のKAAT神奈川芸術劇場での公演を皮切りに、京都、福岡、沖縄と4カ所で上演する。
兼島 復帰50年の枠に埋もれてはいけない作品だと思っていた。初演からほどなくして再演が決まり、さらにツアーでたくさんの人に見てもらえるのが純粋にうれしく、ありがたい。
田中 兼島拓也さんという人が沖縄で育って考えていたことを全部ぶつけた作品。再演はうれしい。
―新たに中山祐一朗と佐久本宝がキャストに加わった。変更点は。
兼島 俳優が持つキャラクター性や年齢、人物同士の関係性が変わる部分がある。単語のチョイスを変えたり、若さゆえのエピソードを入れたりした。
―初演から1年半。この間の変化は。
兼島「『決まり』という言葉が強固で、決まりの方向に急速に進むようになったと感じる。ウクライナでは戦争が続き、ガザ地区ではイスラエルからの攻撃が続く。離島への自衛隊配備が加速し、米軍との協力関係を強める動きもある。作品では「バックヤード」という言葉で、犠牲を隠していると表現するが、(実際は)隠すことすらしなくなっている。(観客が)初演と同じ言葉を聞いても、初演の時と今で別のものが入り込む感じがあると思う。
―沖縄を舞台に描くことに難しさや怖さを感じることはあるか。
兼島 怖さはもちろんある。神奈川芸術劇場のプロデュースで、横浜で上演されることを前提に始まった企画。沖縄に住む自分が書けることは何かと考えた。作品は沖縄の人の苦難を描くが、諦め感も描く。美談にしないように意識した。同世代の友人たちから自分たちの声がメディアに反映されず、不可視化されている感覚を持っていると聞いた。そこを描けるのは沖縄に住む自分だからかもしれない。最終的な批判を受け入れるのも沖縄の人間だからできる。
田中 役者の半分は沖縄出身の人がいいと早い段階で決めた。沖縄の人の言葉とそうじゃない人の言葉は、言葉の裏側の濃さが違うと思ったから。キャスティングがチャンプルーになればなるほどいい。
―大千秋楽は沖縄で、慰霊の日になる。
兼島 慰霊の日は沖縄が戦後ずっと変わらないことを痛感する一日でもある。その日の上演は、なぜ変わらないのか、を提示する大きな意義がある。いろいろな考えの人に刺さったり、ざわつかせたりできる作品。新しい対話が聞こえる上演になれば。
田中 (沖縄の)外の人間としても変わりたい。変わるきっかけになればいい。
上演は6月22日が午後2時と午後7時開演の2回公演。23日は午後2時開演のみ。チケットは全席指定で前売りは一般4千円。24歳以下は2千円、18歳以下は千円、障がい者は各20%割り引き。(当日は500円増し)。問い合わせはなはーと、電話098(861)7810。