【記者解説】運転手不足で正念場を迎える路線バス、維持するには…


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 沖縄県内でバスの運転手不足が深刻化している背景には、長時間労働や低賃金などの印象が強い影響で求職者数が低調なまま推移し、定年などによる退職者の穴埋めができていない現状がある。県内各社は運転手不足のため路線バスの運行本数を減らすなど対策を迫られているが、今後も運転手不足が予測される中、さらなる減便は必至だ。利用者が右肩上がりに増える展望は描けておらず、公共のインフラとしての路線バスの維持が大きな課題となっている。

 沖縄労働局によると、2018年度のバス運転手の平均有効求人倍率は2・61倍。全業種の1・18倍を大きく上回っている。本島南部と周辺離島地域では3・63倍で、全業種の1・27倍の3倍近い数値となっている。

 路線バス事業を手掛ける県内4社は、限られた運転手で既存の路線を維持するため、一部で運行本数を減らしている。その一方で、運転手が働きやすい環境をつくるため長時間勤務を減らすなど、さまざまな取り組みを続けているが、人手不足による減便を回避するには至っていない。

 観光客増に伴い、県内では貸し切りバスの需要が高まっているが、沖縄総合事務局によると業界全体で人手不足の傾向があり、十分な運転手を確保できていない。

 県は賃金支援などで補正予算を組んでいるが、「わったーバス党」など一般の利用者を増やす取り組みをさらに強化するとともに、「中高生のバス通学無料化」など玉城デニー知事の公約の早期実現で公共財としての路線バスを維持することが求められている。
 (関口琴乃)