防衛省が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡って設置した軟弱地盤の改良工事に関する有識者を集めた「技術検討会」の9月の初会合で、関西国際空港や羽田空港では見られなかった大浦湾特有の軟弱地盤を指摘する意見が出たことが10日までに分かった。政府はこれまで「一般的で施行実績が豊富な工法」で地盤改良が可能だと強調してきたが、沈下に関する試験結果では一定の時間がたった後に沈下の度合いが大きくなる現象も確認された。難工事になることが改めて浮き彫りになった。
委員の一人は時間がたった後に沈下の度合いが大きくなる現象について「関空の粘土とか羽田空港の粘土と違ってこの特殊な土」があるためで「サンゴ由来」だと分析。「飛行場を維持・運営していく上では忘れてはいけない」と指摘した。
また、ある委員は、新基地のエプロン(駐機場)となる箇所の下に谷地形があって軟弱地盤が集中していると指摘。「ここは沈下が起きる可能性がある。対策を検討しておく必要がある」と完成後の地盤沈下に懸念を示していた。埋め立て後の沈下が許容範囲を超えた場合「どう対応するのかシナリオを考えておかないといけない」との指摘もあった。
防衛省は初会合後の記者説明で、土質調査の状況や護岸構造、工法の候補などを提示したことに対し「提言はあった」としていたが、詳しい内容は明らかにしていなかった。
防衛省側は波を防ぐための堤防について米軍要望を受けて高さを決めたことを説明した。
検討会の初会合で意見・提言が上がった一方、全体としては防衛局の調査設計や工事の想定が妥当だとの意見が示され、地盤改良そのものが可能だという政府の説明に異論は出なかった。工費は検討会の議論対象になっていない。検討会は委員8人のうち委員長を含む4人が政府系機関で勤務経験があり、中立性が疑問視されている。
<用語>軟弱地盤
泥や多量の水を含んだ軟らかい粘土または砂からなる地盤の総称。米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の大浦湾の海底に存在している。大浦湾の軟弱地盤は海面下90メートルの地点まで達し、地盤の強さを示すN値がゼロを示す「マヨネーズ状」と指摘されている。埋め立て工事を進めるには地盤改良工事が必要となっている。防衛省が国会に提出した地盤改良に関する報告書では、海上からの地盤改良に3年8カ月、陸上で実施する地盤改良に1年1カ月の工期を見込むが、公費の増大や工事の長期化が指摘されている。