辺野古関与取り消し訴訟の論点は?


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名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、沖縄県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決を違法だとして県が起こした「関与取り消し訴訟」で福岡高裁那覇支部は23日、判決を言い渡す。県は国交相の裁決を取り消すよう訴えているが、国は裁判の対象に当たらないと主張している。高裁が県の主張を認めれば工事停止に近づくが、国の主張を認めた場合、実際の審理に踏み込まず県にとって「門前払い」となる可能性もある。

 沖縄防衛局は県による埋め立て承認撤回に対して行政不服審査制度を使って審査請求し、国交相は県の撤回を取り消す裁決を下した。県はその裁決が違法だという訴えを展開するが、国は入り口論で「そもそも審査請求を受けて下した裁決は裁判の対象外だ」と主張している。裁判所が国の主張を認めれば、裁決の中身を議論せず県の主張は門前払いされる。

 それに対し県は「形式的には裁決だが、実質は国の違法な関与に当たるので裁判の対象となる」と述べている。裁判所が県の立場を認めれば、具体的な論点に立ち入って裁決が適法か違法かについて双方の主張を審理することになる。

 裁決を巡り県は(1)一般私人を救済するための制度を防衛局が使うことはできない(2)仮に制度を使えたとしても審査請求先は国交相ではなく知事だ(3)同じ内閣の一員である「身内」の国交相が防衛局の主張を受けて裁決を下したことは中立性・公平性を欠く―として「違法だ」と指摘している。

 これに対し国は(1)私人と同じ立場で承認を受け撤回されたので、行政不服審査制度を使える(2)請求先に誤りはない(3)国交相が内閣の一員であることは裁決の公平性を損ねない―と反論している。

 今回判決が出るのは辺野古新基地建設を巡って県が起こした2訴訟の一つだ。高裁から審理が始まった。数カ月で最高裁判決に至る可能性もある。もう一方の抗告訴訟は地裁から審理が始まるため年単位で訴訟が展開される見通しで、初弁論は11月26日に予定されている。