【記者解説】辺野古移設を巡る抗告訴訟の焦点は?


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新基地建設の作業が進む工事現場=10月14日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸(小型無人機で撮影)

 県による辺野古埋め立て承認撤回を国土交通相が取り消した裁決を巡り、県が裁決取り消しを求めて提起した抗告訴訟の第1回口頭弁論では裁決に関する議論はなく、今回の県側の請求が裁判所で扱う対象かどうかの「入り口論」の審理に終始した。県の訴えを「不適法」だと主張する国側の根拠である2002年の最高裁判決を想定し、県側はあらかじめ02年の最高裁判決の他にも複数の論点を用意した。裁判所は国側にその点に対する反論がないことから、国の主張にさらなる追加を求めた。裁判を即刻終わらせたいと考えていた国側の狙いは外れた形だ。

 02年の「宝塚事件」の最高裁判決は、国や地方公共団体が国民に義務の履行を求めて裁判を起こすことはできないと判断して訴えを却下した。国側はこの判例を持ち出して、即時に裁判を終結して県の訴えを却下するように求めた。

 一方、玉城デニー知事は意見陳述で、裁判所が県民の民意と「本気」で向き合い、実質的な審理に入って判断することを強く求めた。

 安全保障に関わる訴訟で、裁判所が国に有利な判決を下し続けていることも踏まえれば、今回の訴訟でも裁判所が実質審理に入って判断を下すためのハードルは高い。

 知事の訴えへの裁判所の答えは、今後の山口和宏裁判長の訴訟指揮で形を帯びることになる。

 県側が主張した承認撤回の適法性や国交相裁決の違法性などに関して裁判所が審理して判断するかは現時点で不透明で、引き続き焦点となる。
 (安富智希)