【深掘り】抗告訴訟を「本丸」と位置づける沖縄県、門前払いを求める国 互いの狙いは?辺野古抗告訴訟初回弁論


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
法廷での意見陳述後、報道陣の取材に応じる玉城デニー知事と弁護団=26日、那覇市の県庁

 名護市辺野古の新基地建設に関し、県による埋め立て承認撤回を取り消した政府の決定が違法だとして県が国を相手に起こした抗告訴訟は玉城県政が「本丸」(知事周辺)と位置付ける裁判だ。玉城デニー知事は意見陳述で、軟弱地盤による工事の長期化など辺野古新基地建設の問題点を主張した。2月の県民投票で7割超が埋め立て反対に投じたことなどに触れ民意が県の後ろ盾にあることを強調した。一方、国は県から指摘された問題に正面から答えることはせず裁判所に門前払いを求めた。

長丁場も

 政府が県による埋め立て承認撤回を取り消したことを受け、県は対抗策として国を相手に起こした訴訟は二つある。今回始まった抗告訴訟は進展が遅く1年以上かかる場合もあるが、裁判官の判断次第で撤回の中身にまで立ち入ることができる。撤回の中身が正しいと認められ効力が復活すれば、辺野古の工事はできなくなる。

 知事周辺は「両方とも大事だが、より力を入れている」と話す。玉城県政を支援する団体も呼応するように初回弁論の前に弁護士を招いた学習会を開催し、当日に集会を開いて玉城知事を激励した。

 意見陳述に立った玉城知事は裁判官を見詰め、力を込めたり、時に傍聴席に顔を向けたりするなどの動きを交え訴えた。

 9月にあったもう一方の訴訟の意見陳述で、資料に目を落とし淡々と読み上げる玉城知事の姿に、県庁内で「もっとアピールするべきだ」との意見が出ていた。26日の弁論を終え、関係者は「玉城知事も強く訴えるよう意識したのだろう。裁判長も知事の方を向いて聞いていた」と振り返った。

3分

 県側からは玉城知事のみならず弁護士が法的な根拠を説明し、合計で約26分間を使った。それに対し国側の陳述は約3分だった。

 この裁判で国側は、県の訴えがそもそも訴訟の対象外だとして却下を求めている。実質審理に入らず「入り口論」に終始し、軟弱地盤の問題など県からの指摘には一切応答していない。政府の姿勢について県幹部は「中身に自信があるなら、国側も堂々と主張すればいいのに」と首をかしげる。

 ただ、今回を含め県と国の間で辺野古新基地を巡って8件の訴訟が提起されたが、県が勝訴したことはない。政府関係者は「確定判決で(国の)主張が認められれば、県が取れる法的対抗手段はもうないのではないか」とみる。

 それに対し、県関係者は「確かに司法で勝つのは難しいが、主張は正しいと考えているので、いちるの望みを託している」と述べる。一方で「それでも敗訴すれば、この国の三権分立の在り方について問題提起し全国に辺野古の問題を知ってもらう」と語った。
 (明真南斗、當山幸都)