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「病院、買い物に行けない…なんとかならないか」 高齢者の声に応えて5年かかって区がワゴン車購入 待望の区民バス始動 交通弱者ゼロへ


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「便利になった」とワゴン車導入を喜ぶ区民ら=11月13日、名護市汀間

 【名護】行きたくても行けないをゼロに―。沖縄県名護市汀間区は11月6日、区民なら誰でも使えるワゴン車、通称“区民バス”を導入した。市東海岸に位置する汀間区。大型ショッピングセンターや病院などが集中する市西海岸には車がないと行けず、高齢者の「なんとかならないか」の声に応えて、区一丸となって区予算から5年かかって購入費を捻出した。新名善治区長は「東海岸地域には買い物や通院に困る交通弱者がいる。その一助になれば」と話した。

 汀間区は人口約240人、うち半数以上が70歳を超える超高齢化地域だ。西側と東海岸を結ぶ路線バスは1本で日に3便しかない。高齢者の多くが買い物や通院を子や孫、知人に頼んで車で送迎してもらわなければならない状況だ。

 導入した車両は10人乗りのワゴン車。管理者は区長が務め、使用する責任者が区に文書で申請し、許可を得る仕組みだ。区では週に1~2回、西側市街地と汀間を結ぶ“定期便”も検討している。

 同区の松田藤子さん(79)は「ゲートボール大会などの時は個人の車を出していた。大きい車が1台あると安心だ」と喜んだ。比嘉磨利子さん(67)は「(婦人会の行事などのときは)2~3台に分乗しなければいけなかった。婦人会でも活用したい」と笑顔で話した。

 名護市も東海岸地域など過疎地域を対象にしたコミュニティーバスや乗り合いタクシーなどデマンド交通の導入を検討している。6日、ワゴン車の御願を終えた新名区長は「免許返納する高齢者も増えるだろう。市より一足先に運営するので利用状況など市に提供したい。市の制度と両輪で区民生活が向上すればなおいい」と語った。(佐野真慈)