夢と現実とのギャップに揺れるアラフォー 映画「幸福路のチー」 あすから桜坂劇場


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 アニメを上映していると、「アニメなら見ないわ」というご意見をいただくことがある。もったいない。だから、アニメの良さを考えてみた。

 やっぱり表現方法が広いのがいい。顔から口が飛び出るくらい笑ったり、うれしすぎて人間の身体能力以上に飛び跳ねたり、究極に美しかったり。登場人物の感情を疑いようがないほど豊かに表現し、こちらの感情を揺り動かす。

 アニメ未体験の方は、例えばこの作品から始めてみるのはどうでしょう。

 主人公のチーは、1975年生まれ。台湾に実在する街“幸福路”で暮らす、空想が大好きな少女チーは、30代半ばに差し掛かり、思い描いていたような大人にはなっていなかった。夢に満ちあふれた過去の自分と、現実とのギャップに後悔や葛藤が芽生えるアラフォー女子。独身。

 幼少期の夢は覚えていないけれど、たぶん私は、あの頃なりたかった私ではない。どこで間違ったんだろう。なんて思うけれど、間違いも含めて肯定し、今の自分をいとおしいと思えるのが良い。

(桜坂劇場・下地久美子)