「新基地建設の醜さは人間の心の醜さ」 世界的音楽家・坂本龍一が辺野古の海で語ったこと


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辺野古新基地の埋め立て海域の大浦湾の美しい海を船上から視察し、感想を語る坂本龍一さん=3日午後、名護市辺野古沖

 映画「ラストエンペラー」で米アカデミー賞に輝くなど、世界的音楽家の坂本龍一さんが3日、名護市辺野古沖の美しい海を視察した。過重な基地負担が続く沖縄に新基地建設が強行される状況に対し、坂本さんは「主従のような米日関係だけでなく、日本の中の本土と沖縄の間に差別があり、大和人と琉球人、アイヌの間にあったような差別が今もあるように思えてならない」と語った。

 音楽を通した地震被災地支援や環境保全の重要性を説く活動を続け、沖縄の基地過重負担の改善を求めて発言してきた坂本さんにとって、辺野古の現地視察の念願がかなった日となった。

 べたなぎの晴天の下、坂本さんは約1時間半かけて、大浦湾や辺野古沖の埋め立て現場近くの海域を巡った。サンゴの種類や工事の進捗(しんちょく)状況に何度も質問を繰り出し、水深15メートル超の海底がくっきり見える透明度とサンゴの美しさに「素晴らしい」「これはすごい」と感嘆する声を上げた。

 軟弱地盤問題などを念頭に置き、坂本さんは「自然は一度壊したら元に戻せない。工事自体もいくらかかり、いつ終わるかも見えない異常な状況になっている。何十年後かに完成しても本当に有事に使える基地になるかも分からない。美しい自然を壊してまで造る意義はもちろんない」ときっぱり言い切った。

 新基地反対の沖縄の民意が無視される状況に対し、「民意に従う民主主義を逸脱している。基地建設事業の醜さは人間の心の醜さとも言える。それが自然の美しさと強く対比して見えた」と比喩的に語った。

 安保法制反対のデモで話題となった学生団体SEALDsの創立メンバーだった奥田愛基(あき)さん(27)も同行。坂本さんは「彼らと共に社会にどう訴えていくか、今後の課題として考えたい」と述べ、自身の活動の中で新基地問題を発信する手法を模索する考えを示した。