【記者解説】安倍首相が施政方針で「辺野古」「普天間」を言及しなかったわけは…


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 安倍晋三首相は20日の施政方針演説で、民主党政権も含めて従来言及してきた米軍普天間飛行場の返還問題に触れなかった。安倍首相自ら「政権の最重要課題」と強調してきた沖縄の基地負担軽減に向けた政府の姿勢が、大きく後退していることを印象付けた。普天間飛行場の移設先として、これまで強調してきた「辺野古移設」の文言を盛り込まなかった背景には、軟弱地盤の問題があるとみられる。

 政府は昨年12月、軟弱地盤の改良を含む基地建設事業完成までに12年かかる見通しを示した。工期や工費が大幅に伸び、設計変更申請が県から認められる見通しも立たない中で、早期返還を政権の実績として訴えにくい側面がある。

 県民からの反発も強い「辺野古移設」の文言を演説から削る一方、首里城再建や那覇空港第2滑走路の整備などをアピールすることで「沖縄に寄り添っている」との姿勢を示す狙いもありそうだ。

 今回の演説は、今年56年ぶりに日本で開かれる東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、農産物の輸出増加、人口が増加した地方の紹介など、「新しい時代」を象徴する事象を取り上げたのが特徴だ。安倍首相は「もはや、かつての日本ではない」と現政権下の変化を誇って見せた。

 だが東京一極集中と地方の過疎化も進むばかりだ。5Gをはじめデジタル分野での立ち遅れも顕著になっている。閣僚の退任や首相主催の「桜を見る会」を巡る問題も含め、日本や政権を取り巻く問題が相次いでいるが、それらへの言及はなかった。安倍政権が抱える課題から目を背ける姿勢も、演説で浮き彫りになった。
 (知念征尚)