日本政府、「不都合な真実」避ける 施政方針で佐藤学・沖国大教授


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佐藤学沖国大教授

 辺野古新基地建設問題で軟弱地盤の問題が出てくる中、工期や工費が膨れあがっている。不都合な事情が明るみになり、これに言及すると国会で論戦になってしまうという懸念があったのではないか。

 一方で辺野古を進めるという方針は既定路線で既成事実化するという考えもあるとみられる。県は工事を止められないということを見せつける姿勢の表れではないか。演説からは、既に辺野古は争点ではないという認識が読み取れる。むしろ隠しておきたいことを国会の場で触れない方がいいという計算もあるのだろう。

 他方、首里城の復元や那覇空港第2滑走路供用開始には言及した。政府が「沖縄のために一生懸命やっている」というアピールは忘れなかった。辺野古を巡る軟弱地盤や工期、工費の問題は多くの国民は知らない話だ。国が沖縄のために一生懸命やっているという都合のいいメッセージだけ送れば、辺野古反対の県民の民意を、国民から隠し、多くの国民の支持は得られると考えているのだろう。

 裏を返せば、辺野古問題は政府にとって触れられたくない不都合な真実が露呈したということだ。多大な国民の税金が用いられることを多くの国民に伝えることが重要だ。国会論戦を通じ、きちんと議論すべき問題だ。
 (政治学)