2019年3月、張り出された県立高校二次募集の合格発表に宮城飛河(ひゅうが)さん(16)=沖縄市=の番号はなかった。学習障がいがあり、頑張っても思うように点数は上がらない。同級生のほとんどが進学し「中卒では就職も厳しい」と言われるプレッシャーの中、不安を押し殺して努力を続けてきた。受験した高校は定員割れをしていた。空席があるのに入学は認められず「おれってこの程度なんだ」との言葉が口をついた。
発達障がいと診断されたのは4、5歳の頃。多動で部屋から飛び出したり、パニックを起こしたりしたというが、幼稚園のアルバムはどのページも、他の子どもたちに囲まれ笑顔で活動する姿が写っている。
クラス担任がみんなと一緒に活動できるよう工夫を凝らしてくれたといい、毎日楽しく通う中で飛河さんの表情は豊かになり、絵本の読み聞かせも落ち着いて楽しむようになった。母智子さん(39)は「こんなに変わるんだ」と驚いた。就学時は特別支援クラスも勧められたが「みんなと一緒にいたい」と小中学校とも普通学級に通った。
ただ、小学校高学年から授業では遅れを感じ始めたという。少しでも追いつこうと中学では塾にも通った。担任と相談し、勉強の苦手を補おうと部活は自主練習もして腕を磨き、3年の最後まで続けた。学校行事も率先して参加した。
「勉強が苦手でもできることはある」と技術を生かせる仕事を考え、受験先は専門高校を選んだが、不合格。定員割れしていた二次募集の高校もまた、入学は許されなかった。特別支援校の対象でもない。
友達や先生との日常、部活、恋愛と高校生活で学ぶことは教科学習以外にも多く、多くの子どもにとって学校は居場所だ。中学を卒業したばかりの15歳。行き場をなくした飛河さんは「終わった」と落ち込んだ。「勉強が苦手でも、将来を考えて進学したいと思っている気持ちを評価してほしい。席が空いているなら入れてほしい」。智子さんはやるせなさをにじませ、力を込める。
県内の高校進学率は97・3%(19年度学校基本調査)。2・7%には飛河さんのように勉強が苦手な子やいじめや不登校、厳しい家庭環境など困難を抱えた子どもたちがいる。自立する力を付けるため県は高校生の中退防止に力を入れる。一方、サポートが必要な層が入学さえできない現状を「自立にも貧困対策にもならない」と智子さんは訴えた。
(黒田華)
県立高校への進学を希望する重度知的障がいがある仲村伊織さん(17)と家族の活動は、ほとんどの中学生が高校進学し、社会では高校での学びが求められているにもかかわらず、成績が足りなければ空席があっても入学できない定員内不合格の問題をあぶり出した。「誰ひとり取り残さない」を理念に「質の高い教育をみんなに」を掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にもつながる、共生社会に向けた高校のあり方を考える。
〈高校でも一緒に・定員内不合格を考える〉②に続く
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