母親も漢字の読み書きが苦手… 入学後苦労するも高校で学んだ大切なことを息子に 〈高校でも一緒に・定員内不合格を考える〉②


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息子・飛河さんの幼稚園時代のアルバムをめくり「友達は宝。どの子の個性も伸ばしてほしい」と話す宮城智子さん=1月24日、沖縄市

 息子・飛河(ひゅうが)さん(16)の高校受験を機に定員内不合格の見直しを訴える宮城智子さん(39)=沖縄市。自身も漢字の読み書きが苦手で高校では単位取得に四苦八苦した。智子さんは今、自身の働く姿を通じて高校進学がかなわなかった息子に社会で生きる力の大切さを伝えている。

 「発達障がい」の言葉も一般的でなかった高校生時代。教科書やテストの問題文を読むのに苦労した。テストは赤点ばかり。先生たちは「苦しくても中退するなよ」と励ましてくれた。

 授業中は分からなくても手を上げて授業を盛り上げた。教室では他の生徒や先生の手伝いをして学校生活を支えた。智子さんを卒業させるため、先生たちが点数以外で評価する話し合いを重ねていたことを卒業後に知り、「どんな分野でも、生徒の力を伸ばそうとしてくれた」と感謝する。

 笑顔であいさつすること、苦手を認識して補う方法を相談すること、できないことは手伝ってもらい、できることは努力して他の人を助けること。社会生活に必要な姿勢やコミュニケーションを学び、友人から「ぶっ飛んだ行動力」と称される力を付けて智子さんは高校を卒業した。

 卒業後は飲食店で働き21歳で結婚した。2~3歳だった飛河さんが発達障がいを指摘されたのをきっかけに、障がいについて学び始めた。息子を支えたいとの思いから障がい者が就労する事業所で働き、ヘルパーなど10近くの資格を取得した。2019年2月には障がいのある人たちが地域と触れ合い、工賃も得られる生活介護事業所「マイフレンド」をうるま市に立ち上げた。

 高齢者が多い地域への豆腐の宅配、洗車、ラッキョウの皮むき。多種多様な仕事を作り出すのは、利用者一人一人の個性を考え抜いた結果だ。「みんな素晴らしい個性があり、どんな人でも何かを生み出す。税金も払う」と確信を持って活躍の場づくりに奔走する。

 障がいのある人の多くが特別支援学校へ進み、地域との接点が結びづらくなっている。「関わりがあるから、本人も周囲もつきあい方が分かり、仕事も生まれる。特支校を否定はしない。地域の友達と学ぶ学校も選べるようにしてほしい」との思いは強い。

 県立高校への進学がかなわなかった飛河さんは今、居場所を見つけて生き生きと過ごす。「個性を伸ばせば社会も潤うはずだ」と智子さんは語る。

(黒田華)


 県立高校への進学を希望する重度知的障がいがある仲村伊織さん(17)と家族の活動は、ほとんどの中学生が高校進学し、社会では高校での学びが求められているにもかかわらず、成績が足りなければ空席があっても入学できない定員内不合格の問題をあぶり出した。「誰ひとり取り残さない」を理念に「質の高い教育をみんなに」を掲げるSDGs(持続可能な開発目標)にもつながる、共生社会に向けた高校のあり方を考える。

〈高校でも一緒に・定員内不合格を考える〉③に続く
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