「好材料」「別の話」… 辺野古取り消し訴訟、沖縄県敗訴確定へ 溝を深める国・県それぞれの思惑とは


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 名護市辺野古の新基地建設を巡る「関与取り消し訴訟」で、最高裁が今月26日の判決言い渡しを決めた。県敗訴となった高裁判決が確定する見通しで、政府は主張が認められたとして、軟弱地盤の改良工事に入るため今後予定する設計変更申請に向けた弾みとしたい考えだ。一方、県は係争中の別訴訟がまだあることも踏まえ、設計変更に応じるかどうかは判決とは「別の話」だと政府をけん制する。

 判決が言い渡される期日が決まったことを受け、県庁6階には16日夕刻、玉城デニー知事の受け止めを取材しようと報道陣が集まった。だが玉城知事は書面でコメントを発表する対応を取り、「期日が指定されたのみ」だとして敗訴の見通しに関する言及は避けた。

弁論ないまま

 辺野古の工事に関する裁判で、弁論が一度も開かれずに最高裁判決を迎えるのは今回が初めてではない。県の埋め立て承認取り消しを巡り争われた2016年12月の最高裁判決でも、弁論の機会がないまま県敗訴の確定判決が下された。県関係者は16日、「敗訴」が濃厚となったことに「せめて1回ぐらいは弁論があるのではないかと期待していた」とこぼした。

 政府は現在、県による埋め立て承認撤回を国土交通省が取り消したことを根拠に、辺野古の埋め立て工事を進めている。最高裁判決で政府の主張が認められれば、司法の後ろ盾が得られたとして工事を進める攻勢につなげる考えだ。

 「驚きはないが、変更申請を控えている側にとって好材料だ」。防衛省関係者は「勝訴」の見通しがついた受け止めを淡々と語った。

県幹部「別の話」

 折しも辺野古の工事では、軟弱地盤改良のため防衛省が予定する県への設計変更の申請時期が焦点となっている。

 同省が昨年9月に設置した「技術検討会」では、有識者が地盤改良の工法などを議論しており、作業は終盤に差し掛かっている。ここに来て海底地盤の深い地点の軟弱さを示すデータが相次いで発覚したが、河野太郎防衛相は「技術検討会でいろいろ検討していただいて、お墨付きを得ている」と意に介さず、再調査の必要はないと強調する。

 辺野古の埋め立て承認撤回を巡っては那覇地裁で係争中の別件の裁判もあり、確定判決までに年単位の期間を要する見込みだ。だが政府関係者は「論点は出尽くしており、そちらの判決を待つ必要はない」として変更申請の環境は整いつつあると力説する。

 だが県の受け止めは違う。2訴訟のうち片方で県の主張が認められなかった段階で、県幹部は政府の設計変更申請についても「別の話」として、申請が出された場合の県の対応に今回の最高裁判決が与える影響を否定する。

 特に軟弱地盤を改良する工事について、県は環境への影響が甚大であることや地盤強度のデータの取り扱い方などに疑義があるとして批判を強めてきた。同幹部は「申請に対しては適切に対応する方針は変わらない」と語った。
 (明真南斗、當山幸都)