最下位脱出の軌跡を記す 元教育長が全国学力テストドキュメント本出版


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沖縄の学力向上を振り返る本を出版した諸見里明元教育長=3日、那覇市泉崎の琉球新報社

 2013年から16年まで県教育長を務めた諸見里明さん(現昭和薬科大学付属高校・中学校校長)が著書「学力テスト 全国最下位からの脱出」(学事出版、税抜き1900円)を出版した。4月中旬から全国で販売される。諸見里さんは教育長在任中、「学力向上推進室」の立ち上げなどに取り組んだ。小中学生の「全国学力テスト」で沖縄は6年連続最下位だったが次第に向上し、現在は全国上位(2019年)にまで上昇した。当時をドキュメント形式で描いている。

 著書は学力テストそのものに対する問題意識や秋田県の先進事例から学んだこと、学校現場を回って教員の意識改革に取り組んだことなどを記している。

 諸見里さん自身、東京で過ごした大学生時代に「沖縄の人は学力が低いんだよね」などの言葉を浴びた苦い記憶があるという。「今の沖縄の子たちは堂々と胸を張れる。沖縄の成績がなぜこれほど飛躍したのか全国的にも関心が高く、本にして全国販売することになった」と話した。

 諸見里さんは「わずかな学校が動くだけではだめだ。全体の意識を変えることに全力を注いだ」と学力向上推進室の設置や教員の意識改革を振り返った。また家庭の所得と学力の相関関係が指摘される中、子どもの貧困率が全国一の沖縄でこそ学力を向上させる重要性を強調した。