〈45〉カウンセリング 自分らしさへの気付き


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 皆さんはカウンセリングに対してどのようなイメージをお持ちですか。悩みや問題を相談して、カウンセラーが解決法をアドバイスしてくれるものと思われている方が多いのではないでしょうか。確かに広義ではそれもカウンセリングの一つかもしれません。しかし基本的なカウンセリングの「中心」となるのはカウンセラーではなく、相談にいらっしゃるクライアント自身なのです。カウンセリングでは、クライアント自身が持っている本来の力で気付きや解決に向かうことを「支持」します。

 全てのカウンセリングの基本となるクライアント自身が「中心」のカウンセリング「来談者中心療法」とは何でしょうか。病気やけがをした時に医師に診てもらい処方箋をもらう。これは医師が中心となる「診察」です。患者に対する「診察」では具体的な指示や指導が必要な場合が多いです。しかし基本的なカウンセリングというものは、カウンセラーがあれこれと解決に向けての「指示をする処方箋」を出すというものではありません。クライアントが悩みを相談し、それをカウンセラーがじっと耳を傾ける。この時カウンセラーは、クライアントの話を遮ることなく、また批判もしない。そこにいるクライアントの存在、話すことをありのままに受け入れる。家族や友人だと、どうしても主観や経験に基づいてのアドバイスをしがちになります。

 一方、カウンセリングという非日常的で安全な空間の中で話をすると、クライアントは理解してもらえた、また受け入れてもらえたという体験をすることができます。この体験こそが、クライアント自身が自分の人生を切り開いていく力を認識することにつながるのです。クライアント自身が本来の力に気付いて自ら歩んでいくこと、これをじかに体験できることがカウンセリングの魅力です。

 カウンセリングは、自分らしさを取り戻すこと、または気付いていくことをお手伝いします。カウンセリングが皆さんの日常に少しでも身近になってくれたらうれしく思います。

(古内重雄、ゆめクリニック 心療内科・精神科)