[日曜の風]コロナ禍で辺野古設計申請 卑劣な火事場泥棒だ


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 4月21日付の「JIJI.COM」によると、「防衛省沖縄防衛局は21日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について、埋め立て海域の軟弱地盤改良に伴う設計変更を沖縄県に申請した。(中略)政府は県の不作為の違法確認訴訟で対抗する方針」という。

 このことに対し玉城デニー知事は、「対話に応じず、工事手続きを一方的に進めようとすることは到底納得できない」と会見で語った。法令にのっとり、申請内容を精査する考えらしい。

 国はなぜ今、強引に辺野古埋め立てを急がなきゃならないのか? 新型コロナウイルス感染が広がり、この国は大変なことになっている。緊急事態宣言も全国に出された。

 最近では全国の警察が4月中旬までの約1カ月間に取り扱った変死体(道で倒れていた人や自宅で独り亡くなっていた人)、埼玉、東京、神奈川、三重、兵庫5都県の計11人が、新型コロナウイルス感染を確認されていたことが判明した。これはたまたま検査された、たった5都県のわずか1カ月間の不審死だ。実際はもっと多いことだろう。

 コロナでバタバタ人が亡くなっている。そんな中、辺野古の埋め立て工事を強引に進めることに、どんな正義があるのだろうか。あたしは国のしていることが、卑劣な火事場泥棒にしか見えてこない。

 そういえば4月7日、安倍首相は「感染症への対応を踏まえつつ、憲法審査会で活発な議論を期待したい」といっていた。明らかに、新型コロナ危機に便乗した憲法改正論だ。憲法改正をしなくても、コロナの対応はできる。というか、できることもやっていないのが今の政府ではないか。

 そもそも、東京オリンピックをやりたいがため、PCR検査を制限した安倍政権のせいで、コロナはここまで広がってしまった。辺野古についても、弱虫で米国と話し合いもできず、この国の誰もが納得できる説明ができない。

 あの人がトップのままで、この国はいいのだろうか。

(室井佑月、作家)