大城武成さん(83)=那覇市=は東村高江から国頭村奥間へ向かう山中で出会った少年を忘れることができません。少年は行く手を遮るように細い山道に横たわっていました。
《少年は私と同い年くらいで両太もものあたりを撃たれており、歩けなくなって倒れていました。少年は「いったーあんまーや 捕虜さってぃ はいったんどー」(君たちの母親は捕虜になってしまったよ)と私と兄に言いました。
それは事実ではありませんでした。本当は私たちを引き留めたかったか、一緒に連れて行ってほしかったのかもしれません。そう言った少年の体をまたいで私たちは山を下りました。》
栄養失調に苦しむ武成さんらは少年を助けることができませんでした。少年がその後どうなったか分かりません。「思い出すと、いまでも胸が苦しいです」と振り返ります。米兵に撃たれた少年、夫を失い嘆く女性とともに、この少年のことを家族に語り続けてきました。
武成さんは戦後、奥間を幾度か訪れました。昨年も訪れ、お世話になった家族を捜しました。
《現代に生きる若い人たちには戦争を二度と起こしてはならないと伝えたいです。》
悲しい戦場を生き、平和を求める武成さんの願いです。
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大城武成さんの体験談は今回で終わります。次回から壕(ガマ)での戦争体験を紹介します。