「感染者排除、今と同じ」 ハンセン病と沖縄戦描いた「ツルとタケシ」展開催


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 【名護】ハンセン病に関する問題を伝える沖縄愛楽園交流会館(名護市済井出)が6月1日、開館から5年を迎える。5周年特別展として2日から「儀間比呂志 絵本『ツルとタケシ』原画展」を開催する。学芸員の辻央(あきら)さんは「ハンセン病と沖縄戦を描いた作品だが、感染者を恐れ排除しようとする人々の描写は新型コロナウイルスを巡る今の社会状況にも通じる。作品を通して真の平和とは何かを考えてほしい」と呼び掛ける。

幼いきょうだいの視点でハンセン病患者の沖縄戦を描いた「ツルとタケシ」の原画展会場。学芸員の辻央さんは「19枚の原画の美しさを感じてほしい」と話す=29日、名護市の沖縄愛楽園交流会館

 交流会館は2015年6月1日、ハンセン病に関する誤った認識や強制隔離政策の歴史を伝える資料館として開館した。5年間で2万9556人が来館し、常設展示などを通して元患者らの暮らしぶりや強制断種・堕胎の歴史を伝えてきた。

 「ツルとタケシ」原画展は4月11日から開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止で同4日から5月末まで臨時休館したため、開幕をずらした。

 同作は版画家・絵本作家の儀間比呂志さん(1923―2017年)が愛楽園や宮古南静園を取材し、ハンセン病にかかった少女ツルとその兄タケシの視点で沖縄戦を描いた物語だ。作中では住民に「らい病の家」と忌み嫌われたり、墓への埋葬を親戚に拒まれたりするシーンがある。

 辻さんは「ハンセン病と新型コロナウイルス感染症は異なる病気で安易に同一視すべきではないが、感染者を巡って人々が恐怖に『感染』する状況は同じだ」と指摘する。その上で「家族を守り、怖いものは排除したい気持ちは誰の中にもある。ツルとタケシの物語に今触れることで、ハンセン病への差別を自分の問題として考え直せるのではないか」と語った。

 入館無料。8月23日まで。午前10時~午後5時。月・祝日休館。新型コロナウイルス感染防止のため団体は不可。マスク着用と入り口での手指消毒が必要。問い合わせは同館(電話)0980(52)8453。