新型コロナウイルスの感染拡大で、沖縄県経済が大きな転機を迎えている。政府が「新しい生活」を打ち出す中、県経済も「新しい沖縄経済」への脱皮に挑戦したい。
■縮む市場
コロナ禍で、年間1千万人超に沸いた県観光入域客は今年7月まで対前年比87%減(OCVB予測)、年間300万人超だった外国人観光客も7月まで「ゼロ」(同)と、厳しい状況にある。国内・海外路線とも航空便は減便、欠航が継続。一部ホテルや観光土産品店、飲食業は破綻や廃業、休業、業態変更が相次ぐなど観光業界はコロナ禍の直撃で、青息吐息である。
病院など医療業界も感染回避による通院激減などで8割減など大幅な減収に悲鳴を上げる医院も出ている。
教育も大打撃を受け、卒業・入学式の中止、延期に加え、新学期の2カ月近い開始延期で義務教育など授業機会の喪失、教室閉鎖で学習塾の破綻懸念など枚挙にいとまがない。
■構造改革の好機
県経済は破綻懸念のピンチだが、逆に「脆弱(ぜいじゃく)な経済構造改革・刷新の好機」でもある。この機に「新10K+I経済」への転換を図りたい。
戦後沖縄経済は、基地、公共事業、観光の「3K依存」から、新基地(返還跡利用)、新公共事業(次世代インフラ整備)、新観光(医療・島嶼(とうしょ)観光)の新3K経済へ転換する。次世代を担う新7K経済(健康、環境、教育、研究、金融、交通、交易)の強化と新10Kを支えるICT(情報通信技術)インフラとソフトの迅速な構築で、今後100年の発展を手中にできる可能性を秘めている。
県試算では米軍を含め基地返還効果は1兆円超。鉄道(6千億円)、LRTなど新交通システムの構築、ICTインフラ強化で県内移動・交通と通信(Wi―Fi)の無料化を拡大し、遠隔教育やテレワークの促進、物流、移動の大幅なコスト削減が可能になる。
観光もコロナ禍で「量的拡大型」の危険性と脆弱性を露呈した。コロナ後は、量から質へ、薄利多売から高付加価値型の厚利少売へ。従来の短期型(2泊3日)からハワイ長期滞在型(9泊10日)、回遊観光型からバカンス(長期休息)型への転換を図りたい。国内外の富裕層向けのリゾート&医療(検診・治療)ツーリズム、遠隔医療の強化拡充も新規開発・発展分野である。
テレワーク・在宅勤務の急進展も「コロナ効果」だ。国内有数のリゾート地・沖縄は国内外の理想的なテレワーク拠点として開発を急ぎたい。
■ザル経済からの脱却
旧3K経済は、経済規模の拡大が強調され注目されてきたが、コロナ後の重要な視点は財政も含め投下資金の「県内歩留まり率」の向上にある。「沖縄振興予算40~54%が県外企業」(内閣府)に流れ、沖縄防衛局の「大型新基地建設は工事費の7割が県外ゼネコン」(沖縄公庫)に、7300億円超の観光収入も多くが「県外・海外資本に還流・流出」(旅行社)してきた。
コロナ感染を機に、収益の外部流出(だだ洩れ)の「ザル経済」から脱却を図る。そのためには、収益の「県内歩留まり率」を新指標に、ICT投資とテレワーク拠点形成など「新リゾート型ビジネスの展開」がキーワードとなろう。地産地消、地産他消、地産代替、地元優先重視の「県経済構造のパラダイムシフト(変革)」に挑みたい。
(随時掲載)
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まえどまり・ひろもり 1960年生まれ、宮古島市出身。明治大学大学院修了。琉球新報論説委員長を経て2011年4月から沖縄国際大学教授。専門は沖縄経済、基地経済等
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新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、沖縄県が出した活動自粛・休業要請は解除された。しかし、活動制限が市民生活や経済に与えた打撃は今後も続く。感染防止対策や「新しい生活様式」が働き方や人と人との接し方を変え、ひいては人々の意識を変えていく可能性がある。「コロナ禍の先に」あるものは何か。県内外の有識者に示してもらう。