身元不明の遺骨納める「魂魄の塔」 静かに冥福祈る 慰霊の日


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雨上がりの陽光に包まれて祈る家族連れ=23日、糸満市米須の魂魄の塔

 沖縄県内の慰霊塔で戦後最も早く建立され、身元不明の遺骨を納めていた糸満市米須の魂魄の塔には、曇り空の下、早朝から遺族らが訪れた。ことしは新型コロナの影響で、例年なら付近の路上に列をなす車もまばらだった。マスク姿で訪れた遺族らは、静かに戦没者の冥福と平和を祈った。

 午前7時半ごろ、妻と娘の3人で訪れた比嘉徹さん(76)=豊見城市=は、小学校の教員だった父・仁興さんを亡くした。仁興さんは糸満市阿波根のガマ(自然壕)で米軍の攻撃を受け、犠牲となった。

 当時は1歳だったため、戦争や父の記憶はほとんどない。しかし「戦後の大変な時代に育った。そのつらい経験も戦争の残した痛みの一つだ」と幼少期を振り返った比嘉さん。「父親のいる友達がうらやましかった。父を亡くし、悔しかった」と無念さをにじませ、平和が続くことを願った。