本日、令和2年沖縄全戦没者追悼式が執り行われるに当たり、広島市民を代表して、犠牲になられた方々のみ霊に謹んで追悼の言葉を述べさせていただきます。
ここ沖縄は、先の大戦で、国内で最大の地上戦が繰り広げられ、お年寄りから子どもまで数多くの尊い命が奪われました。戦禍の犠牲となられた方々の御無念とご遺族の深い悲しみに思いを致すとき、誠に痛恨の極みであり、哀惜の念を禁じえません。
沖縄の皆さまは、戦争の惨禍を経験しながらも、幾多の困難を乗り越え、目覚ましい復興を遂げられるとともに、悲惨な戦争の体験を基に、平和の尊さを力強く訴え続けておられます。原爆の惨禍を経験した広島も、「こんな思いを他の誰にもさせてはならない」という被爆者の切なる願いを基に、核兵器のない世界恒久平和の実現を訴えてきているところです。
しかし、世界では自国第一主義が台頭し、国家間の排他的、対立的な動きが緊張関係を高めるなど、私たちの訴えを翻弄(ほんろう)するかのごとき動きが強まっています。今、私たちが直面している新型コロナウイルスという人類の新たな脅威に立ち向かうためには、世界的な連帯を強めることが何よりも重要であることが明らかになっています。
そのために我々市民は、戦争や核兵器のない状態こそがあるべき姿だということを世界の市民社会の共通の価値観にしていかなければなりません。そして、各国の為政者がそのためにリーダーシップを発揮するよう後押しもしていかなければなりません。
また、戦争終結から75年が経過し、戦争や原爆の悲惨さを自らの体験として語ることができる人々が少なくなる中、若い世代には、その中心となって、平和を希求する心を確実に引き継いだ上で、戦争や原爆のない世界恒久平和の実現に向けた取り組みの主役となっていくことが重要になっています。
そのために、広島市と長崎市は、沖縄県の多くの市町村をはじめ世界の164の国と地域の約7900の加盟都市からなる平和首長会議を設立し、世界恒久平和の実現に向けた取り組みを進めているところです。平和を愛する沖縄の皆さまには、今後、世界の市民社会の連帯をさらに広げ、国際世論の醸成・拡大に向けた大きな潮流をつくっていくために、ぜひ私たちと共に力を尽くして行動してくださることを期待しています。
終わりに、戦没者の方々のみ霊の安らかならんことをお祈り申し上げますとともに、ご遺族並びにご参列の皆さまのご健勝とご多幸を祈念致しまして、私の追悼の言葉といたします。
令和2年(2020年)6月23日
広島市長 松井一実