河野太郎防衛相が地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備を停止すると発表した。山口、秋田両県の反発と、費用の高騰からそうなったといっていた。6月15日の朝日新聞デジタルには「陸上イージス、急転直下の転換 政府幹部『殿のご乱心』」という記事の中で、「北朝鮮のミサイル開発という脅威のなか、米国による武器購入圧力もあって、安倍政権が『導入ありき』で進めていた」と書かれていた。
この短い文に、あたしは二つの疑問がある。一つは米国から要求されれば、日本はなんでもその要求を飲まなくてはいけないのかということ。
もう一つは、イージス・アショアを購入すると決めた2017年12月の閣議決定のときと今とで、北朝鮮とこの国の関係が何か変わったのかということ。
思い返せば、安倍首相は17年の9月28日の臨時国会の冒頭で「国難突破解散」という理由で衆議院の解散をした。国難とは、北朝鮮の驚異と少子高齢化のことだった。
北朝鮮との関係は変わってない。向こうの首席と会談もできず、向こうのミサイルは17年とおなじ数あるだろう(時間を経て増えているかも)。そして、日本の超少子高齢化は17年に急に問題とされたのではない。解散権は首相にあるといっても、その理由はこじつけだとわかる。これも権力の私物化の一つだ。
話を戻して、イージス・アショアの件であるが、17年には安倍首相やその応援団がテレビなどに出まくって、「絶対に必要なもの」といっていた。当時の彼らのいっていることが正しければ、「絶対に必要なもの」はそれが高額でも「絶対に必要なもの」であるはずだ。
けど、そうでなかった。彼らのいってることは、米国の要求をすんなり飲むことに対し、国民への言い訳だった。税金の無駄遣いの。
辺野古の新基地建設もそんなものだと思っている。河野大臣ではなくて、安倍首相が説明をすべきだ。
(室井佑月、作家)