知事「共通点ほとんどない」 辺野古、中谷氏提案に既視感 北部首長の反応は濃淡


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中谷元・元防衛相(左)と面談する玉城デニー知事=3日午後、県庁

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、元防衛相の中谷元衆院議員が2、3日の両日、玉城デニー知事や名護市の渡具知武豊市長、米軍キャンプ・シュワブ周辺の辺野古、豊原、久志(久辺3区)区長らと相次いで会談した。中谷氏は約20年前に議論された「軍民共用」案を持ち出して北部振興や自衛隊の共同使用など持論を展開したが、現行計画の推進を踏まえた全て既視感のある主張で、玉城知事は会談内容に「共通点はほとんどなかった」と指摘した。

■事実誤認

 「新基地建設は軟弱地盤や工期、工法、技術的な問題があり一刻も早く中止して日米沖縄で話し合いを進めてほしい」。玉城知事は政府が計画を停止した地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」を挙げ、より一層、工費や工期、技術的な課題のある新基地建設の断念を訴えた。

 中谷氏も完成まで少なくとも12年、約9300億円かかるという政府の試算を示したが、「早期移設に努力いただいた皆さんに大変申し訳ない。沖縄の皆さんに迷惑をお掛けしておわび申し上げたい」と工事の遅れを謝罪。地盤改良工事の設計変更申請について「前向きに検討し協力いただきたい」と県に審査を急がせた。

 会談後、玉城知事は「率直に言って意見交換はよかった」と述べ、今後、政府との「対話」の糸口をつかむために万国津梁(しんりょう)会議の提言書を持って上京する考えを示した。

 一方、万国津梁会議の提言内容など中谷氏に事実誤認があったことを指摘し「本当に事実の情報がどこまで詳しく伝えられているのか、非常に食い違っているところもあると思った」と、県の主張を認識していないことに疑問を呈した。

■容認派と面談

 「軍民共用」は1998~2006年に当時の稲嶺恵一知事らが掲げ、02年7月に国、県、名護市が締結した「代替施設の使用協定に係る基本合意書」に盛り込まれた。当時防衛庁長官だった中谷氏も署名したが、実現しないまま状況は変化していった。

 約20年の時を経て、中谷氏が示した「軍民共用」案に地元の反応は濃淡があった。渡具知市長との会談では、軍民共用について渡具知氏から具体的な反応はなかった。一方、3区長の一人は「北部地区の発展につながる。北部に民間機が発着できる施設ができるのは、誰が考えてもいいことだ」と歓迎した。

 年に1度は名護市を訪問しているという中谷氏。久辺3区長らとの会談の場では区民らとも親しげにあいさつを交わした。「仲間付き合いをして意思疎通ができている」と自画自賛する中谷氏は、元市長で移設を容認した比嘉鉄也氏、島袋吉和氏とも懇談した。一方、移設に明確に反対している稲嶺進前市長は「時間の関係」として面談しなかった。
 (座波幸代、塚崎昇平、岩切美穂)